著者
村山 祐司 尾野 久二
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.19, 2002

<BR><B>I はじめに</B><BR> 最近,GISの世界では,計量地理学の成果と可視化技術を統合・発展させたGeoComputationが注目を集めている。この分野の研究は多岐にわたるが,重要な研究課題の1つに空間分析用のプラットホームの構築がある。その先導的役割を果たしのはSpaceStat を開発したLuc Anselinであるが,最近では,Leeds大学CCGやペンシルベニア州立大学GeoVistaなどでも精力的に研究が進められている。また,空間分析ツールの情報を集め,インターネット上で公開しているCSISS(Center for Spatially Integrated Social Science, http://www.csiss.org)の研究プロジェクトも関心を集め,世界的に高い評価を得ている。このように,人文地理学にとって有用な空間分析諸手法が次第にGISに取り込まれつつあるが,本研究は欧米の動向を踏まえ,オープンソースを利用した統合型空間分析システムを開発し,日本におけるGIS教育や地域分析に貢献することをめざしている。<BR><BR><B>II 利用ソフトウェア</B><BR> 本システムはWindowsNT/2000/XP上で動作する。 本システムを構築するにあたり活用したソフトはフリーウェアで,すべてオープンソースである。<BR>1.GIS関連<BR>GeoTools for Java(CCG開発のJava用GISエンジン), JTS(Java Topology Suite) (オーバーレイ解析モジュール)<BR>2.空間分析関連<BR>R言語・・・統計分析用言語。商用統計分析ソフトSplusのクローン。多くの拡張パッケージが存在する。<BR><BR><B>III 統合型空間分析システム</B><BR>(1)概要<BR> プログラム本体(Java言語で作成)とR言語を統合するために,本システムは以下のツールを利用している。<BR>1.JCOM・・・システム本体とRSTATサーバー間の通信ソフト(オープンソース)。<BR>2.RSTATサーバー・・・JCOMとR言語間の通信(独自開発)<BR> これらを用いることにより,GIS機能と空間分析機能とのTight なカップリングを実現した。<BR>(2) 空間分析機能<BR> 現時点で,以下の解析機能をサポートしているが,近い将来,空間的相互作用分析や空間的拡散モデルなど人文地理学の分析でニーズが高い技法やモデルを順次追加していく予定である。<BR> ・ 空間解析(バッファー),TIN,ボロノイ,凸包<BR> ・ 記述統計,多変量解析,ESDA(探索的空間分析)<BR> ・ ポイント・パターン分析,空間的自己相関分析,ニューラルネット分析<BR>(3) 実行例(空間的自己相関分析の事例)<BR> 第4図はローカルG統計量を求める画面を表示したものであり,第5図はローカルG統計量を導出した結果の地図表示の例(茨城県,市町村単位)である。<BR><BR><B>IV 展望</B> <BR> 現在,村山のサイト(http://land.geo.tsukuba.ac.jp/teacher/murayama/index.html)において,本システムを試験的に公開している。空間分析機能をより充実させるとともに,WebGIS化を果たすことが今後の課題として残されている。<BR><BR>参考文献<BR>村山祐司・尾野久二編 『地域分析のための地理情報システム─Arc/INFOを利用して─』,文部省重点領域研究「近代化と環境変化」技術資料,1993,206頁。