著者
野中 章久 山下 善道 金井 源太
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.97-107, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ハウス等の温度を遠隔監視するシステムは,すでに多くの製品が市販されているが,フィールドサーバ研究にはユーザが自作することを想定した系譜がある.本稿はこの自作の系譜をハウス等の温度の遠隔監視システムへ応用するものとして,市販IoTプロトタイピング・キットを活用して水稲育苗施設の温度の遠隔監視システムを開発する.そして,実際の水稲生産法人の実用に供し,そのシステムの実用性を明らかにすることを課題とする.この課題解明のため,岩手県奥州市で近隣の農家に水稲苗を販売し,また作業受託・借地を合わせ約50 haの水稲作業面積を持つ水稲生産法人の芽出機と育苗ハウスにおいて実用試験を実施した.試験に供したシステムは安定的に稼働したため,芽出機の夜中の見まわりを廃止できた.また,ボイラ故障をいち早く発見するなどの効果があった.これら芽出機に関して削減した賃金や故障による損失の金額換算は,このシステムの年間費用を大きく超えることを明らかにした.また,育苗ハウスについても日中の見まわり回数を半減するなどの効果があった.このように稼働の安定性と実用性が明らかとなった.