著者
星田 義彦 原留 成和 山下 展弘 村上 一郎 宮宅 健司 宮谷 克也 吉野 正
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.692-697, 1995
被引用文献数
4

われわれは, 甲状舌骨嚢胞からの穿刺吸引細胞診によって術前に癌化を診断しえた甲状舌管癌の1例を経験したので報告する. 症例は67歳の女性. 2年前より, のどぼとけのような前頸部の小腫瘤に気付いていたが放置していた. 数ヵ月前より, 急に腫瘤が増大したため, 当院外科を受診し入院となる. 甲状舌骨嚢胞と考えられたが, 嚢胞内の穿刺吸引細胞診を施行したところ一部で核内細胞質封入体を認める乳頭状癌の像を呈した. 甲状舌管癌の診断のもと腫瘍摘出, 所属リンパ節廓清を行った. 摘出腫瘤は直径6cm大で弾性硬, 表面平滑. 割面では嚢胞状部と嚢胞内腔に乳頭状に突出する充実性の腫瘤形成がみられ, 組織学的にも乳頭癌であった. 甲状舌骨嚢胞の癌化の頻度は長嶺らによると1.61%であり, 本邦での報告例は自験例を含めて26例と比較的まれである. 甲状舌骨嚢胞の癌化を腫瘍摘出前に知ることは重要なことであるが, 画像診断のみから良悪性を判定することは難しい. したがって, 甲状舌骨嚢胞の摘出の術前に侵襲の少ない嚢胞穿刺細胞診を行うことは有用であると考える.