著者
山下 樹三裕 谷山 紘太郎 山下 康子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ダイオキシン(2、3、7、8-テトラク口口ジベンゾ-p-ジオキシン;TCDD)の摂食、飲水、運動活性に及ぼす影響を、ラットを用いて20週間にわたり検討した。7週齢のWistar系雄性ラットにTCDD1μg/kg/weekを経口投与し、摂食・飲水・運動活性測定装置に入れ、経時的に各パラメーターを測定した。その結果、TCDD投与群の体重増加は対照群に比較して、投与4週後より有意に抑制され、9週以降その差はより顕著であった。また、TCDD投与群は対照群に比べ、概して運動量の増加が認められ、特に16週目以降有意な増加が認められた。しかし、運動量の日内リズムに変化ま認められなかった。なお、摂食および飲水量についてはTCDD投与の影響は認められなかった。これらの結果より、TCDD摂取による体重増加抑制は摂食・飲水行動の抑制によるものではないこと、および成熟ラットにおいてもTCDD摂取により活動性が高まることが示唆された。次に、コミュニケーションボックスを用いて、ラットに精神的ストレスまたは身体的ストレスを負荷し、血液-脳関門の透過性に変動をきたすかどうかを検討した。透過性は静脈内にエバンスブルー色素を投与し、その脳実質内への移行の度合いを脳各部位について測定し、インタクト群と比較した。その結果、大脳皮質においてストレス負荷群で明らかな血液-脳関門の透過性の亢進が認められ、その程度は精神的ストレス負荷群の方がより高かった。また、海馬においてもストレス負荷により透過性亢進の傾向を示した。したがって、ストレス負荷により血液-脳関門の透過性が亢進し、普段では透過しえない物質でも脳内に移行しやすくなることが示唆される。このことより、TCDD投与群に精神的または身体的ストレスを負荷した場合、TCDDの運動活性に及ぼす影響がさらに大きくなる可能性が示唆された。