著者
山藤 栄一郎
出版者
長崎大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

日本紅斑熱は、Rickettsia japonicaが原因微生物であり、マダニ以外の媒介生物は知られていない。しかし申請者は、ヤマビル咬傷による日本紅斑熱の発症例に加え、同疾患の13%がヤマビル咬傷後の発症であったことを報告し、ヤマビルを新規の媒介生物の一つと推定している。そこで本研究では、① 千葉県南房総で、ヤマビルの体内からR. japonicaを検出し、② 同地域でヤマビルの吸血被害の実態と、R. japonica抗体保有率との相関を評価し、予防や啓発に役立てることを目標とする。
著者
前原 由喜夫
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は他者に対する利益を期待して行動する際に生じる利他的動機づけが,認知的コントロール能力や精神的健康に与える影響を実証的に検討したものである。具体的には,認知課題に成功すると他者(チャリティ団体)が利益を得られる状況で,空間性ワーキングメモリ課題の成績がどのような振る舞いを見せるかに関する一連の実験を行った。その結果,利他的動機づけ条件のほうが自分の利益が期待できる利己的動機づけ条件よりも課題成績が改善する場面が見られた。また,多動性・衝動性傾向の高い個人のほうが利他的動機づけ条件下において課題成績が向上することが示された。以上より,利他的動機づけは認知能力を改善する可能性が示唆された。
著者
柴田 義貞 本田 純久 中根 允文
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

チェルノブイリ事故が被災家族の子供に及ぼしている精神身体的影響の大きさを明らかにすることを研究目的とする。チェルノブイリ30km圏内からキエフ市に避難してきた家族の子供約4,400人のうち、1,458人(男678人,女780人)を対象に、ウクライナ放射線医学研究所と共同で、2000年および2002年の定期検診時にGoldbergのGeneral Health Questionnaire12項目質問紙(GHQ-12)と不安-抑うつ尺度を用いた精神的健康状態の調査を行い、以下の結果を得た。1.対象者の平均(標準偏差)年齢は男15.7(1.3)歳、女15.7(1.2)歳で、ほぼ全員に診断がつけられており、扁平足および脊柱彎曲異常が41.6%ともっとも多く、胃および十二指腸の疾患、自律神経失調症および心筋症も20%を超えていた。自律神経失調症は、神経症、非精神病性精神障害、心筋症、胃および十二指腸の疾患、胆嚢・胆管の障害、偏平足および脊柱彎曲異常と有意な関連を示していた。2.Goldbergの不安-抑うつ尺度によって「不安あり」あるいは「抑うつあり」とされた者は、それぞれ36.1%、35.8%であった。また、GHQ-12の4項目以上に反応した者は男5.8%、女10.0%であった。3.神経症あるいは自律神経失調症のある者はない者に比し、「不安あり」「抑うつあり」とされた者、GHQ-12の4項目以上に反応した者の割合が有意に大きかった。4.Goldbergの不安-抑うつ尺度はGHQ-12と有意に関連していたが、これら3種類の尺度と疾患の有無との関連に関するロジスティック回帰分析は、それぞれが対象者の異なる側面を描き出すことの蓋然性が高いことを示しており、両者の併用がリスク集団のスクリーニングに有用であることが示唆された。
著者
武藤 浩二 長島 雅裕 原田 純治 安部 俊二 古谷 吉男 上薗 恒太郎 小西 祐馬
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では、疑似科学が用いられた学校教育の実態等を調査するとともに、最近の大規模調査データを用いた血液型と性格に関する解析を行った。その結果、疑似科学言説を用いた授業の多くが「水からの伝言」とその派生物であること、ほぼ全国で行われており高校理科で肯定的に扱われている事例もあることを明らかにした。また血液型と性格に関する解析では、過去の研究結果を拡張することができたとともに、21世紀以降のデータでは、安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した。
著者
門司 和彦 星 友矩 源 利文 東城 文柄
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

ラオスとカンボジアのメコン川流域で約20万人が感染しているメコン住血吸虫対策においては、集団投薬を補完する具体的な方法論が求められている。本研究計画では「メコン住血吸虫対策を事例とした地理学的なエコヘルスアプローチの方法論研究」と題して、「感染症の効果的な制御には感染リスクの高い人口集団と地理環境の両方の理解が重要」である医学地理学的な概念を、環境DNA測定・電子質問票・統計モデリング等の最新技術を駆使した「メコン住血吸虫リスク地図」の作成によって達成する。また、「地域住民の生活・文化への最小限の介入(危険水域の河川を利用しない)で持続的な感染制御への道筋をつける」ことが本研究のゴールとなる。
著者
高橋 達也 藤盛 啓成 山下 俊一 齋藤 寛
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1993年から1997年まで、マーシャル諸島甲状腺研究(The Marshall Islands Nationwide Thyroid DiseaseStudy)によって、現地で医学的・疫学調査が行われた。マーシャル諸島住民では、甲状腺結節性病変の有病率が高かった。甲状腺結節の最も一般的な形態は、腺腫様甲状腺腫(adenomatous goiter)であった。しかしながら、本研究で発見された腺腫様甲状腺腫の患者の多くは、医学的治療を必要としなかった。幾多の他の研究と同じように、女性では、男性と比較して甲状腺結節の有病率が高かった。また、有病率は、年齢とともに高くなり、50歳代の女性で最も高率(約50%)であった。甲状腺結節例の約半数は、触診で診断できたが、残りの半数は、超音波診断によってのみ診断し得た(触診できなかった)。甲状腺機能低下症や甲状腺亢進症(バセドウ病)の様な甲状腺機能の異常は、マーシャル諸島では、比較的まれで、有病率は他国と比較して同程度、もしくは、低かった。太平洋地域(日本を含む)などに多く見られる橋本病(自己免疫性甲状腺炎)は、マーシャル諸島では、まれであった。甲状腺癌の疑いで43人の患者が、現地のマジェロ病院において、マーシャル諸島甲状腺研究の医療チームによってなされた手術を受けた。この43人中、25人については、病理学的に癌が確認された。外科手術で重篤な合併症は、1人も発生しなかった。マーシャル諸島全体での、一般住民の甲状腺結節や甲状腺癌の頻度は、従来報告されているよりもかなり高かった。しかし、我々は、ハミルトン博士(Dr.Hamilton)の仮説、すなわち、「甲状腺結節の頻度は、ブラボー実験の時に住んでいた場所とビキニ環礁からの距離に反比例する(ビキニから遠くなると、結節は減る)」、を確認できなかった。この点に関して、ブラボー実験で被曝した住民における甲状腺癌の頻度に関する予備的な分析では、概算した甲状腺放射線被曝量と甲状腺癌有病率は正の相関(被曝量が増えると甲状腺癌も増える)が有意に示された。
著者
鎌田 七男 大瀧 慈 田代 聡
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.247-250, 2012-09-25

広島県,広島市では昭和48年1月に2km以内被爆者に対し(1次),昭和48年11月に2km以遠の直接被爆者に対し(2次),さらに,昭和49年11月に入市被爆者に対し(3次)「被爆者とその家族の調査」を行った.広島大学原爆放射能医学研究所(当時)は広島県・広島市の行なう原子爆弾被爆者実態調査(昭和35年,昭和40年,昭和48年,昭和50年など)の企画,集計,結果報告に協力してきており,昭和48年・49年に行われた「被爆者とその家族の調査」のうち,家族調査とくに子供の数について解析し,被爆2世者数を119,331名と算定した1).一方,広島大学原爆放射能医学研究所(当時)は設立以来,広島県内白血病発生について継続的に研究・報告してきた2-4).今回は一連の研究の中より原爆被爆2世に発生した白血病について報告する.
著者
楢原 知里
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

マラリアの治療薬として推奨されている抗マラリア薬Artemisinin(ART)は、熱帯熱マラリア原虫の治療において効果が高い。しかし東南アジアでは、耐性マラリアの存在が報告されており、耐性マラリアの対策に追われている。本研究により、タイ王国に分布するARTの耐性マラリアおよびARTの治療を受けた患者の薬物動態関連遺伝子・疾患異常症を調べることで、ART治療による耐性マラリアの変異や、ヒト側の持つ薬物動態関連遺伝子および異常疾患がARTの治療とどの様な相関があるかを明らかにし、ARTを用いたマラリア治療を前進させる事が出来ると考えている。
著者
後藤 惠之輔 森 俊雄 坂本 道徳 小島 隆行
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学工学部研究報告 (ISSN:02860902)
巻号頁・発行日
vol.35, no.64, pp.57-62, 2005-03

In recent years, the small island nick named as 'Gunkanjima' (formal name "Hashima") located in the southwest of the Nagasaki harbor attracted a lot of attention. Historically Gunkanjima, an island rich of coalmine supported modernization of Japan by supplying invaluable energy. However, abrupt shift in energy use during the 1970s forced the closure of the mines in this island on January 15, 1974. Eventually, since almost thirty years this island became an uninhabited island. But still there are many cultural heritages valuable from scientific standpoint left in the island, including the first Reinforced Concrete Apartment Building in Japan. In this paper, we have summarized the results of the interview with the former residents of this island and also the field survey in "Gunkanjima". This investigative study indicated that, the community structures followed by the residents of this island in those days, can be an ideal model to solve the present social problems arising in Japan. The results of the study also revealed the immense importance of Gunkanjima to be preserved as an industrial heritage, symbolizing the industrial growth of Japan. Hence got sufficient potential to be utilized as a scientific research center for the future generation and which in turn would promote revitalization of the surrounding areas.
著者
鈴木 理恵
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:13451375)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.47-61, 1999-03-23
著者
山下 俊一 高村 昇 光武 範吏 サエンコ ウラジミール
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

チェルノブイリ原発事故後、放射線ヨウ素内部被ばくによる甲状腺発癌リスク以外に、ニトロソアミン系における発癌動物モデルが証明され、近年の環境汚染問題でヒトにおいてもその可能性が報告されている。そこで、ベラルーシの甲状腺癌症例の地域別分布と放射線ヨウ素被ばく状況、大量有機農薬使用による水質汚染に着目し、その関連性について包括的なデータの検証と共同論文発表を行なった。これに合わせて、福島原発事故後の甲状腺超音波検査の解析結果から、スクリーニング効果以外の甲状腺癌発見増加の原因として、川内村の異なる水源の飲用水中の硝酸・亜硝酸動態を測定し、その因果関係を検討したが、有意な関係性は認められなかった。
著者
吉川 禄助
出版者
長崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

①SFTSフレボウイルス(SFTSV)は2011年に中国で発見され、その後我が国でも発見された、新規のフェニュイウイルス科フレボウイルス属に属する新興ウイルスであり、重症熱性血小板減少症候群の原因ウイルスである。SFTSVはヒトには病原性があるが、実験動物であるマウスには病原性を示さず、マウスはSFTSVを自然免疫依存的にその病原性を抑制していることがわかっている。そこで、その病原性の差異を理解することはSFTSVの制御につながると考え、その原因を探索することを目的とした。前年度では、IFNシグナル阻害活性を有するSFTSVのNSsタンパクがヒトでは機能するが、マウスでは機能しないことを見出した。また、それはNSsがIFNシグナルにおいて重要な役割を担う、宿主タンパクであるSTAT2と結合できないためであることを見出した。今年度はマウスに加えて、SFTSV非感受性であるハムスターでも同様な現象がみられることを確認した。その結果、NSsはハムスター細胞においてマウスと同様にIFNシグナルを阻害できず、NSsはハムスターSTAT2と結合できなった。そのため、ハムスターもマウスと同様の機構でSFTSVを抑制していると考えられる。このことから、NSsの抗STAT2活性が病原性を規定し、その宿主特異性を規定していると強く言えると考えている。この結果から、NSsとSTAT2がSFTSVの治療標的になりうると推察している。これらの結果をまとめ、現在論文投稿準備中である。②昨年度に引き続きSFTSVのリバースジェネティクスの開発を進めた。その結果、一定の成果が得られた。
著者
山下 俊一 高村 昇 中島 正洋 サエンコ ウラジミール 光武 範吏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

チェルノブイリ周辺の海外連携研究拠点を中心に、放射線誘発甲状腺がんの分子疫学調査を継続し、共同シンポやワークショップを開催した。チェルノブイリ甲状腺がん関連の英語単行本を共同出版し、各種招聘事業と被ばく医療研修指導を行なった。放射線誘発甲状腺がんの感受性候補遺伝子群のSNPs解析を中心に、分子疫学調査と分子病理解析を行い新知見を報告した。これらの成果を、福島原発事故後の県民健康調査事業における甲状腺検査の結果解釈に応用し、福島とチェルノブイリの甲状腺癌の違いを臨床像や分子遺伝学的見地から明らかにした。
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学保健管理センター年報
巻号頁・発行日
vol.12, pp.115-121, 2002-03-02
著者
久保 亨 森内 浩幸 西村 秀一 森田 公一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

肺炎は現在本邦での死因の第3位であり増加傾向にある。肺炎の治療において起因病原体の迅速な確定診断と薬剤耐性の有無の検索は非常に重要である。我々は、簡便で迅速な遺伝子増幅検査法であるリアルタイムPCR法を用いた結核およびその他の肺炎の簡易迅速確定診断・薬剤耐性判定システムの構築を行い、実臨床における有用性を示し、その地域医療への応用を行っている。この系を用いれば、より迅速に低コストで肺炎の鑑別診断と薬剤耐性の有無の推定が可能となり、地域の高齢化・医療過疎化の中でのより効率的な結核・呼吸器疾患コントロール対策モデル作りに繋がると考えられる。
著者
七條 和子 中島 正洋 高辻 俊宏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

原爆被爆者について放射性物質が体内に取り込まれたという証拠はない。放射性物質の経口摂取や吸入は発がんリスクの増加に深く関わっている。1945年死亡した長崎原爆被爆者の保存試料に長崎原子爆弾の原料プルトニウムが存在し、70年経った今もなお被爆者の細胞からアルファ放射線を出し続けている画像を撮影した。原爆被爆者の肺、肝臓、骨等のパラフィン標本からは239、240Pu特有のアルファ飛跡パターンが得られ、内部被曝の放射線量は対照群に比べ高く、被爆時の遮蔽と死亡日に関与していた。我々の結果は原子爆弾による内部被曝の科学的証拠を世界に提示し、被爆者の内部被曝の影響を病理学的に研究するひとつの橋頭保となる。
著者
福山 豊
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

小学校教員養成課程の理科実験のために,小中学校での理科教材の中から,授業と一緒に実験できる教材の開発を行った。また実際に,小学校課程の2年生に,小中学校の理科教材の中から,光と電気磁気の分野に関して,現象の意外性とリアリティを感じることのできる演示実験と実験工作などを織り込み,135分授業の5回の授業と実験の融合による実験授業を,1年間5つの学生グループに行ってみた。具体的な内容は,身の回りの物理現象として光の教材をとりあげ,直進,反射,屈折現象の実験教材を開発検討した。全反射を利用した光ファイバーによる光通信やグラスファイバーなど医療技術などの現代の社会に利用されているものの理解や,夕焼けや朝焼け,青い空,蜃気楼,虹,逃げ水などの自然現象などの理解,カメラ,メガネ,望遠鏡,顕微鏡などのレンズを使った光学機械の理解のために有用な実験教材の開発を行った。また,今日の電気に依存している我々の社会を理解するため,簡単なモーターや発電機,めんカップスピーカー,マイクロホンなど実験工作を織り混ぜた授業と実験の融合による実験授業を行った。また,中学校教員養成課程のための物理実験についても,電磁気の原理を実感をもって理解するための実験開発を行った。今回の研究から,初等・中等学校の教師になる学生への物理実験は,従来行われている科学者かエンジニヤを育成するための定量的測定を主とした実験をやらせるよりも,まず科学の基本法則を使って身の回りや自然の現象を納得させる実験を十分にやらせるほうが学生に物理の興味を持続させるために効果が上がることがわかった。