著者
山下 正隆 武弓 利雄 佐波 哲次
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.538-542, 1998-12-05

実生のチャの根は深くまで分布するが, 挿し木によるチャは浅根化の傾向が強い.このことから, 挿し木個体の根系を構成する基本的な根である不定根の伸長方向が, 根系分布と密接な関係を持つのではないかと考えられた.そこで, 我が国の品種, アッサム種, 中国種を用いて, 挿し木苗から生じた不定根(直径1mm以上)の伸長方向の変異について検討した.挿し木は1994年および1995年の6月に行い, いずれも翌年の3月に苗を掘り取って根を調査した.不定根の伸長方向は鉛直線に対してなす角度で表した.我が国の品種はいずれも不定根の伸長角度に変異の幅が小さく, そのほとんどが65〜75゜の比較的大きな角度を示すことが明らかとなった.アッサム種, 中国種は不定根の伸長角度に変異が大きく, さらに, 平均伸長角度は我が国の品種に比べて約15゜小さかった.また, 我が国の品種に比べて, アッサム種, 中国種の多くは不定根の発生が少なかった.以上の結果から, 我が国の品種, アッサム種, 中国種間での不定根伸長方向の多様性が明らかとなった.また, アッサム種, 中国種は, 我が国の品種に比べて深い根系分布を持つ可能性を示唆した.
著者
関谷 直正 山下 正隆 田中 勝夫
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.66, pp.41-59, 1987
被引用文献数
4

年間の摘採回数,整枝時期および整枝強度が次年度収量に及ぼす影響を明らかにするため,やぶきた8年生園を用い,これらを組合せて処理を行い,以後5年間毎年同一処理を行って,これらの影響について検討を加えた。<BR>1.一番茶収量に及ぼす影響については,刈番を含めた合計収量では処理間にかなり大きな差異がみられたが,本茶収量では差異は比較的小さかった。<BR>2.摘採回数が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,1cmの高さで整枝した場合は差異はみられないが,3cmの高さで整枝した場合は,三茶区は四茶区に比べてやや多い傾向がみられた。二,三番茶収量は,秋整枝を行った場合は摘採回数の影響はみられないが,春整枝を行った場合は,三茶区は四茶区に比べてわずかに多い傾向を示した。<BR>3.整枝時期が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,春整枝区は秋整枝区に比べていずれの場合においても劣る傾向がみられたが,刈番を含めた収量で比べるとほぼ同等であった。二,三番茶収量は,春整枝区は秋整枝区に比べてわずかに多い傾向がみられた。<BR>4.整枝強度が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,三番茶まで摘採を行い秋整枝を行った場合は中間整枝の3cm整枝区が最も多かったが,春整枝を行った場合は浅整枝ほど多かった。<BR>四番茶まで摘採を行った場合は1cm整枝区が3cm整枝区に比べて多かった。刈番を含めた収量で比べると,いずれの場合も浅整枝ほど多い傾向がみられた。二,三番茶収量については,いずれの場合も浅整枝ほど多い傾向がみられた。<BR>5.新芽数に及ぼす影響については,一番茶期においては摘採回数の多いほど多く,秋整枝は春整枝に比べて多く,整枝強度では,深整枝は浅整枝に比べて多い傾向がみられ,二番茶期においては,これらの差異は小さくなったが一番茶期とほぼ同傾向であった。三番茶期では,摘採回数および整枝時期による差異はなくなり,整枝強度では,一番茶期とは逆に深整枝区は最も少なくなる傾向がみられた。<BR>6.百芽重に及ぼす影響については,一番茶期においては摘採回数の多いほど軽く,秋整枝は春整枝に比べて軽く,深整枝は浅整枝に比べて軽い傾向がみられ,二番茶期もほぼ同傾向であったが,摘採回数については一定の傾向はみられなくなった。三番茶期では差異は小さくなり,整枝強度では,一番茶期とは逆に深整枝区は最も重くなる傾向がみられた。<BR>7.一番茶の摘採期に及ぼす影響については,処理間にかなりの早晩がみられ,摘採期の最も早い処理区と最もおそい処理区の間には6日~10日間の幅がみられた。<BR>8.一番茶期の摘採期の早晩に対しては,整枝強度の影響は大きく,秋整枝を行った場合は深整枝ほど早く,かつ処理間の早晩の幅は毎年3~4日とほぼ一定であったが,春整枝を行った場合は一定の傾向はみられず,また年次変動も大きかった。