著者
山中 今日子 小田 浩一
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集 第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2009 (Released:2009-11-06)

【目的】主観的な視認性評価が文字の画数の多少とウェイト(線の太さ)から受ける影響は呈示文字サイズによってどのように変化するか、質問紙を用いて調査した。 【方法】刺激は良く使われる漢字の画数分布に合わせてサンプルした1画~20画の90字(加藤・横澤)を画数で4グループに分け、各グループから4文字ずつランダムに抽出した。モリサワ新丸ゴシックのウェイトL,R,M,B,Uを用い、普通紙に2400dpiのレーザープリンタを用い文字サイズは35,22,14,9,6pointでランダム順に印刷した。調査対象者は大学生6名で、見やすい・どちらとも言えない・見にくいの3段階評価を行った。 【結果・考察】評価得点に対する画数,ウェイト,文字サイズを要因とした三元配置の分散分析では三要因の主効果及び全ての組み合わせにおける交互作用が有意であった。(画数:F(3, 15)=87.76, p=.00、ウェイト:F(1.52, 7.58)=50.69, p=.00、文字サイズ:F(1.27, 6.34)=6.45, p<.05、画数×ウェイト:F(2.32, 11.60)=56.75, p=.00、画数×文字サイズ:F(3.47,17.34)=28.51,p=.00、ウェイト×文字サイズ:F(1.72,8.62)=6.48, p<.05、画数×ウェイト×文字サイズ:F(3.92, 19.59)=5.64, p<.01) 文字の複雑さによって読みやすいと感じるウェイトの値は異なると言える。また、この画数とウェイトが主観的視認性にもたらす効果は文字の大きさによって変化し、読み素材として身近な文字サイズでは日常的に見慣れているフォントに近いLやRを画数に関係なく好むことが示唆された。またこのサイズを下回ると、ウェイトが太く画数の多い文字の視認性が急激に低下し、逆にこのサイズを極端に上回るとLよりもR,Mを好む傾向が伺えた。
著者
山中 今日子 小田 浩一
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第9回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.25, 2008 (Released:2009-01-17)

【目的】 ウェイトとは文字の線幅の太さのことである。構造の複雑さに個体差のある漢字の場合、画数の多少によってウェイトと視認性の関係は異なる(山中・小田,2007)。視力の低下に伴い、日本語書体における画数とウェイトが視認性にもたらす影響に変化があるかどうかを検証する。 【方法】 刺激には1~20画の漢字90文字を用い、画数の多少で4段階に区分した。フォントはモリサワ新丸ゴシックからL、R、M、B、Uの5段階のウェイトを用いた。被験者は正常視力1.0以上を有する日本人女子大生10名で、視力低下条件ではシミュレーション眼鏡を用いて視力を約0.4まで低下させた。 これらの画数、ウェイト、視力条件をかけ合わせた40条件において実験を行った。呈示文字サイズの範囲を正答率100%の最小から正答率0%の最大の大きさとなるように調整し、対数間隔で呈示された7段階の文字サイズについて音読課題を20回繰り返す恒常法で認識閾値を測定した。 【結果】 対数に直した認識閾値サイズについて、画数、ウェイト、視力条件を要因とした3元配置の分散分析及び多重比較を行った結果、全ての主効果(ウェイト:F(1.94,17.50)=15.69,p<.01、画数:F(3,27)=1.19,p<.01、視力条件:F(1,9)=328.01,p<.01)及び画数とウェイトの交互作用(F(12,108)=8.28,p<.01)が有意にみられた。 【結論】 視力条件の変化に比例した文字サイズの拡大が必要となるが、視力条件がフォントと視認性の関係を変化させることはない。視力低下の有無に関わらず、日本語書体における視認性が最も高くなるフォントは線幅/文字高さが10%程度のものであると考えられる。