著者
並木 正 田辺 泰弘
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集 第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.13, 2009 (Released:2009-11-06)

ロービジョン者の見え方は千差万別であり、疾患名、視力、視野、色覚といった検査結果や、障害等級といった法的認定のみでは、視覚特性を十分に表現し得ない。日常生活や社会生活で生じる支障や必要な支援も千差万別である。医療従事者やロービジョン者どうしでさえ、その人の見え方を的確に把握するのは至難である。 まして、専門知識を持たない一般の人は、視覚障害者=全く見えない、目が悪い=メガネを掛ければよいとの理解がまだまだ支配的であり、ロービジョンという状態は理解され難く、誤解を受けやすい。 この、「わかりづらさ」ゆえに、ロービジョン者は時にいじめに遭うなど対人関係で窮地に陥ってしまう。特に幼年期や思春期に受けた心の傷は、生涯癒えることのない苦しみを背負わせてしまうことがある。 また、人生半ばにしてロービジョンとなった場合には、自らの状態を的確かつ客観的に把握できなければ、孤立感や劣等感、自暴自棄に陥り障害受容を困難にしてしまう。 そこで、この「わかってもらえない」問題を解決するために、本会では、1997年に、弱視者者の具体的な生活場面に即しての視覚特性や必要な援助をまとめた、カード形式の冊子「私の見え方紹介カード」を考案、刊行した。 選択肢と自由記述を組み合わせたアンケート的な形式の本文と、ロービジョン者の数や使用している視覚補助具、視野欠損について概説した資料編で構成されている。 A6版リング綴じの厚紙カード形式にすることで、必要な項目のみを抜粋したり、順序を変更することが可能で、相手によって伝える内容を変えることも容易であるため、多様な「見え方」や必要な配慮・援助を的確かつ平易に表現することができる。 現在までに約2,500部が完売しており、学校での深刻ないじめを解決に導いたり、弱視教育に携わる教員の参考資料としても活用されている。 発行後10年余が経過し、IT化の進展や視覚補助具の改良などによって陳腐化した内容を更新し、学校生活場面での記述を拡充するため、改版作業を進めており、秋には刊行予定である。 ロービジョン当事者のみならず、診療現場や、教育、福祉関係の方々にもご活用頂ければ幸いである。
著者
山中 今日子 小田 浩一
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集 第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2009 (Released:2009-11-06)

【目的】主観的な視認性評価が文字の画数の多少とウェイト(線の太さ)から受ける影響は呈示文字サイズによってどのように変化するか、質問紙を用いて調査した。 【方法】刺激は良く使われる漢字の画数分布に合わせてサンプルした1画~20画の90字(加藤・横澤)を画数で4グループに分け、各グループから4文字ずつランダムに抽出した。モリサワ新丸ゴシックのウェイトL,R,M,B,Uを用い、普通紙に2400dpiのレーザープリンタを用い文字サイズは35,22,14,9,6pointでランダム順に印刷した。調査対象者は大学生6名で、見やすい・どちらとも言えない・見にくいの3段階評価を行った。 【結果・考察】評価得点に対する画数,ウェイト,文字サイズを要因とした三元配置の分散分析では三要因の主効果及び全ての組み合わせにおける交互作用が有意であった。(画数:F(3, 15)=87.76, p=.00、ウェイト:F(1.52, 7.58)=50.69, p=.00、文字サイズ:F(1.27, 6.34)=6.45, p<.05、画数×ウェイト:F(2.32, 11.60)=56.75, p=.00、画数×文字サイズ:F(3.47,17.34)=28.51,p=.00、ウェイト×文字サイズ:F(1.72,8.62)=6.48, p<.05、画数×ウェイト×文字サイズ:F(3.92, 19.59)=5.64, p<.01) 文字の複雑さによって読みやすいと感じるウェイトの値は異なると言える。また、この画数とウェイトが主観的視認性にもたらす効果は文字の大きさによって変化し、読み素材として身近な文字サイズでは日常的に見慣れているフォントに近いLやRを画数に関係なく好むことが示唆された。またこのサイズを下回ると、ウェイトが太く画数の多い文字の視認性が急激に低下し、逆にこのサイズを極端に上回るとLよりもR,Mを好む傾向が伺えた。