著者
大西 まどか 小田 浩一
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.474-483, 2017-10-01 (Released:2017-12-01)
参考文献数
36

This study aims to explain as quantitatively as possible the readability of Japanese characters in terms of certain elements in the multi-dimensional, and rather qualitative, space of font design. Based on a review of previous studies, two main dimensions have been selected as the most influential on readability ; the relative character size in the bounding box, which we call style, and the stroke width, which we call weight (when discussed in a categorical way). The Gothic fonts were chosen as the target because they are well known to be the most legible. Behavioral evaluations of readability were conducted instead of subjective judgments. In accordance with the reading acuity measurement MNREAD-J, short and easy-to-read sentences were presented to participants, and the time required to read them aloud was recorded along with any reading errors ; this provided three readability indices. Sentences were rendered in one of 12 different fonts consisting of four kinds of style-Old, Standard, Modern, and UD-times three weight levels-Light, Regular, and Bold. Findings for the style suggest that the enlargement of relative size represents a tradeoff with narrowed inter-letter spacing. This means that good legibility of single letter design may not result in good readability of letters in sentences. However, the weight had a notable effect especially in small sizes. Two readability indices were predicted relatively well by participants’ acuity and stroke width. The effect of stroke width had a ceiling between 10 and 15 % of the letter size.
著者
山口 えり 小田 浩一
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第9回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.24, 2008 (Released:2009-01-17)

【目的】限られたスペースに文字を配置するために文字を縦長(長体)にしたり、横長(平体)にしたりする工夫がなされる。この工夫は通常、デザイナの感覚にたよって主観的に行われている。ここでは、縦横比が1/5から5倍という広い範囲の長体化、平体化について、それが視認性にどのように影響をするかを定量的に検討したので報告する。 【対象と方法】刺激にはカタカナ清音46文字、モリサワ新ゴシックLを使用し、縦横比0.2~4.96の範囲を対数間隔で9段階に変化させた。刺激の平均輝度は105cd/m2、コントラスト98%の黒い文字を提示した。手続はまず、調整法で正答率が100_%_の大きさと0_%_の大きさを決めた。次に、その間で対数間隔の7段階に大きさを変化させた文字を提示し、ランダムに変化する文字を認識する課題を20回繰り返した。正答率が50_%_になる閾値文字サイズを推定し、視認性の指標として比較した。被験者は裸眼または矯正で小数視力1.0以上の視覚正常の日本人20人であった。 【結果】縦横比を要因とした一元配置の分散分析の結果、縦横比の主効果は、文字の高さで計った閾値文字サイズに対して(F(8,171)=129.2,p<0.001)、文字の幅に対しても(F(8,171)=221.7,p<0.001)有意であった。また、長体と平体の閾値文字サイズにおいて、各比率の段階ごとに視認性に差があるのか対応のあるt検定を行ったところ、1:0.67と1:1.49の縦横比以外全てが1_%_水準で有意であった。 【考察】縦横比が1:1の正体のとき視認性が一番高い事が分かり、変形を行っていくにつれて徐々に視認性が低下する事が分かった。しかし、t検定の結果から67%程度の長体化は正体とほぼ同じ視認性を維持する事ができると考えられる事から、拡大教材において多くの文字数を入れ込みたいときや、狭い視野で多くの文字を一度に見たい場合に、縦か横の一方向だけを縮小した変形を行うという方法が有効である可能性があると考えられる。
著者
吉野 由美子 小田 浩一
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.43, 2008

目的 本発表では事例Aがダイビングというレクリエーション活動の中で、見ることに目覚め、見る能力をもっと高めたいという欲求を持ち、実際に見えなかった海中の小生物が見えるようになっていく過程を追い、ダイビングという活動が視覚リハに役立ちその可能性を広げる存在であることを明らかにする。 方法 事例Aは年齢60歳、先天性白内障手術による両無水晶体眼、矯正視力0.2、片方に杖を持つことで歩行可能な下肢障害がある。下肢障害の原因は不明である。本稿ではAの日記、26年間700回のダイビングログ、撮影した写真などの記録を分析検討する事例研究法を使用する。 結果 事例Aは、下肢障害があり転ぶことに恐怖心を持っていた。偶然に出会ったスクーバーダイビングの無重力で転ぶ心配のない世界に魅せられていった。水中での安全確保のためのゲージのチェックや、言葉でのコミュニケーションが取れない水中でのサインの確認などのため見ることへの動機付けが強まり、見え方を改善するため情報を集め活用することによって見る能力を高めようとした。また、「見えないから興味がない」と思っていた小生物が、アフターダイビングのおり、プロジェクターで拡大され美しい姿を見ることにより「みたい」という欲求が高まった。このように見ることへの有用な刺激を受け、見ることへの欲求がさらに強まり、その結果Aは光学機器や電子エードを積極的に活用し、視覚リハに励むようになり、現在Aは、小生物の世界を見ることができるようになって来ている。 結論 ロービジョン者が見ることの楽しさを知り、見ることに意欲を持って取り組むことが視覚リハを積極的に利用し、その結果視覚活用能力を向上させることにつながって行くのである。見ることへの動機付けと見ることの楽しさを味わう舞台として、スクーバーダイビングは多くの有用な条件を持っている。また「見える」世界が広がることは、ロービジョン者のQOLの向上に多大の貢献をする。
著者
大西 まどか 渡邊 祐理 宮下 佳子 鈴木 理子 小田 浩一
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集 第19回視覚障害リハビリテーション研究発表大会in東海
巻号頁・発行日
pp.35, 2010 (Released:2010-11-01)

目的: 昨今、ロービジョン人口の増加等により、フォントの視認性も様々な観点から研究されている。 しかし、視認性には様々な要因があり、包括的な研究は未だ少ない。 そこで、本研究では既存のフォントを用いた読書評価によって読みやすさの要因を探る。 対象と方法: 刺激はスタイル(オールド・スタンダード・モダン・UD)、セリフ(明朝・ゴシック)、ウエイト(細・中・太)の三要因を持つ、22 種類のフォントを用いた(UD明朝体のウエイトは中のみ)。 読みやすさの指標には読書視力(RA)、臨界文字サイズ(CPS)、最大読書速度(MRS)を使用した。 被験者にフォントの種類別に読書視力評価の手法で刺激を呈示し、誤読数と読み速度を記録した。 被験者は視覚正常で、日本語を母語とする学生6名。 結果と考察: RAにおいてスタイル、セリフ、ウエイトを要因とした3要因分散分析を行った結果、すべての要因の主効果がみられた (F(3,109)=5.41 p<0.05,F(1,109)=4.50 p<0.05,F(2,109)=25.02 p<0.01)。 また交互作用はセリフとウエイト間のみであった(F(2,109)=3.61 , p<0.05)。 スタイルとウエイトについてTukeyのHSDによる多重比較を行った結果、スタイルはUD=オールド=>モダン>スタ ンダードだった。 一文字当りの字面は大きい順にUD>モダン>スタンダード>オールドとなる。 字面の一番小さかったオールドがスタンダードよりも良く、またUDとオールドの値には有意な差がなかったので、字 面の大きさが読みやすさに直結しているとは言い難い。 また、ウエイトについてもTukeyのHSDによる多重比較を行ったところ、太>中>細となり、ウエイトが太くなるにつれて視認性が向上するという先行研究に沿った結果となった。 なお、CPS, MRSについて3つの要因の効果は見られなかった。
著者
山中 今日子 小田 浩一
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集 第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2009 (Released:2009-11-06)

【目的】主観的な視認性評価が文字の画数の多少とウェイト(線の太さ)から受ける影響は呈示文字サイズによってどのように変化するか、質問紙を用いて調査した。 【方法】刺激は良く使われる漢字の画数分布に合わせてサンプルした1画~20画の90字(加藤・横澤)を画数で4グループに分け、各グループから4文字ずつランダムに抽出した。モリサワ新丸ゴシックのウェイトL,R,M,B,Uを用い、普通紙に2400dpiのレーザープリンタを用い文字サイズは35,22,14,9,6pointでランダム順に印刷した。調査対象者は大学生6名で、見やすい・どちらとも言えない・見にくいの3段階評価を行った。 【結果・考察】評価得点に対する画数,ウェイト,文字サイズを要因とした三元配置の分散分析では三要因の主効果及び全ての組み合わせにおける交互作用が有意であった。(画数:F(3, 15)=87.76, p=.00、ウェイト:F(1.52, 7.58)=50.69, p=.00、文字サイズ:F(1.27, 6.34)=6.45, p<.05、画数×ウェイト:F(2.32, 11.60)=56.75, p=.00、画数×文字サイズ:F(3.47,17.34)=28.51,p=.00、ウェイト×文字サイズ:F(1.72,8.62)=6.48, p<.05、画数×ウェイト×文字サイズ:F(3.92, 19.59)=5.64, p<.01) 文字の複雑さによって読みやすいと感じるウェイトの値は異なると言える。また、この画数とウェイトが主観的視認性にもたらす効果は文字の大きさによって変化し、読み素材として身近な文字サイズでは日常的に見慣れているフォントに近いLやRを画数に関係なく好むことが示唆された。またこのサイズを下回ると、ウェイトが太く画数の多い文字の視認性が急激に低下し、逆にこのサイズを極端に上回るとLよりもR,Mを好む傾向が伺えた。
著者
山中 今日子 小田 浩一
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第9回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.25, 2008 (Released:2009-01-17)

【目的】 ウェイトとは文字の線幅の太さのことである。構造の複雑さに個体差のある漢字の場合、画数の多少によってウェイトと視認性の関係は異なる(山中・小田,2007)。視力の低下に伴い、日本語書体における画数とウェイトが視認性にもたらす影響に変化があるかどうかを検証する。 【方法】 刺激には1~20画の漢字90文字を用い、画数の多少で4段階に区分した。フォントはモリサワ新丸ゴシックからL、R、M、B、Uの5段階のウェイトを用いた。被験者は正常視力1.0以上を有する日本人女子大生10名で、視力低下条件ではシミュレーション眼鏡を用いて視力を約0.4まで低下させた。 これらの画数、ウェイト、視力条件をかけ合わせた40条件において実験を行った。呈示文字サイズの範囲を正答率100%の最小から正答率0%の最大の大きさとなるように調整し、対数間隔で呈示された7段階の文字サイズについて音読課題を20回繰り返す恒常法で認識閾値を測定した。 【結果】 対数に直した認識閾値サイズについて、画数、ウェイト、視力条件を要因とした3元配置の分散分析及び多重比較を行った結果、全ての主効果(ウェイト:F(1.94,17.50)=15.69,p<.01、画数:F(3,27)=1.19,p<.01、視力条件:F(1,9)=328.01,p<.01)及び画数とウェイトの交互作用(F(12,108)=8.28,p<.01)が有意にみられた。 【結論】 視力条件の変化に比例した文字サイズの拡大が必要となるが、視力条件がフォントと視認性の関係を変化させることはない。視力低下の有無に関わらず、日本語書体における視認性が最も高くなるフォントは線幅/文字高さが10%程度のものであると考えられる。
著者
阿佐 宏一郎 小田 浩一
出版者
The Illuminating Engineering Institute of Japan
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.283-288, 2010-05-01
被引用文献数
1

The estimation of optimal print size for reading is often essential in clinical treatment and/or universal design; however, it is not known how to calculate the proper letter size for reading with maximum efficiency. Psychophysics studies have revealed psychometric functions of reading that exhibit a hill-like shape with a plateau of maximum speed and a downfall beyond Critical Print Size (CPS). To control the magnification rate of visual aids for patients with visual impairments, CPS that can indicate the boundary of maximum efficiency is now becoming a noteworthy index to determine optimal letter size. In addition to reading, word searching is also an important task for our living. However, the CPS of word search tasks has not been examined yet. We estimated the CPS of word search from the results of two experiments focused on searching for words in Chinese characters and Japanese alphabet (Katakana: square forms) in Japanese. The functions of the searching tasks showed a hill-like shape almost identical to the reading tasks but with elevated speed, and the CPS were stable around 0 logMAR in both the reading and the searching tasks. Hence, CPS is unsusceptible to tasks and can function as a robust marker for the smallest print size with maximum speed. This finding indicates that CPS is the threshold of proficiency (maximum/reduced) beyond the threshold of vision (visible/invisible). CPS can be a meaningful index to achieve the appropriate control of print size and subsequently help people with visual problems.