著者
木下 明敏 渡辺 講一 山住 輝和 石野 徹 神田 哲郎 原 耕平
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.382-386, 1989-08-05
被引用文献数
3

症例は74歳女性。8年前に直腸癌の手術を受け, 外来にて経過観察中にCEA値の上昇と胸部異常陰影を認め, 精査の目的にて入院した。胸部X線では, 左S^3bに胸膜嵌入を伴った腫瘤陰影があり, 気管支鏡検査にて左上区枝の入口部をほぼ閉塞する形で黄色の柔らかな半球状のわずかな膨隆を認めた。病理組織学的には, 壊死組織にまじって, 有節性Y字状を呈する菌糸が多数認められ, 培養でもaspergillusが確認された。また経気管支的肺生検(TBLB)による腫瘤の病理組織は, ラクトフェリン染色陰性の高分化型腺癌で, 直腸癌の転移と考えられた。本症例は転移性肺腫瘍で抗癌剤使用中の患者で, 転移巣の流注気管支内腔にアスペルギローマが形成された1例であった。今後, 気管支鏡検査法の普及と抗癌剤などの使用の増加につれてこのような症例が増加してくるものと思われ, 症例の集積により菌球の形成過程の機序が解明されることを期待して, これを報告した。