- 著者
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山元 淑乃
- 出版者
- 言語文化教育研究学会:ALCE
- 雑誌
- 言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.129, 2017 (Released:2018-06-05)
本研究の目的は,アニメで日本語を習得した学習者が,日本語で表現する人物像(以下,発話キャラクタ)を,どのような背景と過程によって獲得したかについて,探索的な分析を試みることである。そのため,幼少期から日本のアニメを長時間視聴することで日本語を習得し,日本語と母語で異なる発話キャラクタを演出していると判断されたフランス人日本語学習者Cについて,その日本語学習についての語りを,質的に分析した。分析と考察の結果,Cの発話キャラクタ獲得の背景に,フランス(西洋)と日本(東洋)という対照が見いだされた。そしてCの日本語習得の過程は,アニメの長時間視聴と日本語一人芝居という個人的言語実践を通して,この対照のフランス側ではなく,日本側(アニメで見た日本)において自己肯定を目指し,発話キャラクタを継続的に探索し,獲得する過程であったことが示唆された。