著者
山元 淑乃
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.129, 2017 (Released:2018-06-05)

本研究の目的は,アニメで日本語を習得した学習者が,日本語で表現する人物像(以下,発話キャラクタ)を,どのような背景と過程によって獲得したかについて,探索的な分析を試みることである。そのため,幼少期から日本のアニメを長時間視聴することで日本語を習得し,日本語と母語で異なる発話キャラクタを演出していると判断されたフランス人日本語学習者Cについて,その日本語学習についての語りを,質的に分析した。分析と考察の結果,Cの発話キャラクタ獲得の背景に,フランス(西洋)と日本(東洋)という対照が見いだされた。そしてCの日本語習得の過程は,アニメの長時間視聴と日本語一人芝居という個人的言語実践を通して,この対照のフランス側ではなく,日本側(アニメで見た日本)において自己肯定を目指し,発話キャラクタを継続的に探索し,獲得する過程であったことが示唆された。
著者
山元 淑乃
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.360-382, 2019-12-31 (Released:2020-03-10)
被引用文献数
1

本稿は,教育現場に浸透しているとされる「ネイティブスピーカー志向」の第二言語習得が抱える問題を背景に,「非ネイティブスピーカー志向」の第二言語習得の実態を探索的に解明することを目的とする。その一事例として,あくまで非ネイティブスピーカーとして適切な話し手であろうとする態度を一貫して保持してきた,ある日本人英語学習者Aの英語習得に関するライフストーリーを少年期まで遡り,その学習環境や志向がどのように影響し合って学習がなされたかを分析した。また学習の過程で,Aが英語でどのようなキャラクタをどのようにして獲得したかについても検討した。そして,それらを総合的に考察することにより,Aによる非ネイティブスピーカー志向の学習について以下の4つの特徴を記述した。(1) 第二言語でのキャラクタを意図的に設定して演出し,それを省察する。(2) 第二言語の文化に敬意を持ち,改まりと丁寧さを重視する。(3) 何語であるかに関わらず言葉を大切に,構造を正確に使用する。(4) 伝えたいメッセージを明確に持つ。
著者
永野マドセン 泰子 山元 淑乃 楊 元 Nagano Madsen Yasuko Yamamoto Yoshino Yang Yuan
出版者
琉球大学留学生センター
雑誌
留学生教育 : 琉球大学留学生センター紀要 (ISSN:13488368)
巻号頁・発行日
no.10, pp.17-34, 2013-03

中国語雲南方言の単一話者による日本語音声を分析し、その全体像を把握した。日本人が聞いて不自然でかつ学習効果が少ないと思われる問題点は「子音の強さ」、濁音が清音になる、および「ら行」の音であった。これらについては音響分析により日本人母語話者との差異を指摘した。母音については、狭母音と広母音の差が少ない中国語の特徴がそっくり日本語の母音のパターンに移されていることが観察された。これらの結果から、雲南方言でも北京方言同様、子音の問題が大きいことが明らかになった。Japanese speech sounds produced by a single Chinese speaker was analyzed. The results showed three areas that are most problematic: obstruents being too strong, voiced obstruent become voiceless, and the realization of /r/ is different. For these, spectrographic analyses showed the difference between a native Japanese speaker and the Chinese learner. The Chinese vowel formant pattern was nearly directly transferred to the Japanese vowel pattern and little effect of learning was observed.