著者
山内 一晃 阿部 浩和
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.35-40, 2004

大学は社会で期待される能力を備えた学生育成を教育目的の一とするが、期待される能力の内容や大学での教育成果がどの程度企業で生かされるのか十分把握できているとはいえない。そこで大学教育と企業教育の接点を模索する第1段階として、大手総合建設会社T社の建築設計に関する新社員教育の概要を記録・分析し以下の結果を得た。T社の社員教育は全社的社員教育を推進する「教育研修体系」として整備され、新社員教育はその内の社員や管理職等の階層別教育の一として位置付けられ昭和43年から毎年実施されていること、新社員は1年間大阪で全寮生活を送り、入社後7日間の導入教育を受けたあと3回の配置転換を経験すること、技術系新社員は設計部、見積部、作業所の3部署を経験すること、設計部配属の新社員は配属先の指導担当者からマンツーマン教育を受け、設計部独自のカリキュラムに基づく品質、環境、防災、CG, CAD等の新社員教育を受講し、設計部配属終了時にはそれまでの設計教育の総集編ともいうべきONEDAY EXERCISEなる設計演習を行い、教育成果と設計能力の評価を受けること、この間上長と指導担当者は「新社員教育計画・指導記録表」の作成とフォローを行い次部署に引き継ぐこと、設計部配属の新社員は各種の新社員教育や寮会に出席のため、現業の実務時間は一般社員の約75%程度であること、などが判明した。