著者
山内 昭人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,コミンテルン・パンアメリカン・エイジェンシーの総合的研究を将来にわたってめざし,期間内にそのための基礎的研究を行った。具体的には、以下の2点である。1.最初に,同エイジェンシーの全貌を掴むため,1921年4月初めメキシコに拠点をおいたエイジェンシーの議長片山潜を中心にモスクワのコミンテルン本部へ密送した報告書,および南北アメリカの同志たちに送付した声明や書簡など基本史料35点を精選し,編集のうえ,本報告書の第II部の史料篇に105頁にわたっておさめた。2.次に,それら史料および関連文献のチェックにより,同エイジェンシーの活動実態の解明に着手し,当初の計画では,コミンテルン本部による解散決定の経緯とその背景を明らかにすることまでを果たすことにしていたのだが,さらに研究を進めることができた。すなわち,史料および関連文献を包括的にほぼ渉猟でき,それらをほぼ分析し終え,同エイジェンシーの活動全体を,カナダおよび南米関係を除いて,概括的に捉えることができたので,(すでに考察済みの片山および在ニューヨークの在米日本人社会主義団メンバーを通じての日本との関係を除いて)それらの研究成果を,第I部の研究篇に85頁にわたっておさめた(ただし,資金の分析およびそれを通じての活動把握は込み入っているため,後日の機会に委ねる)。その際,章節ごとにおおよそ編年体で各史料の分析に即した叙述のスタイルを採用してある。本報告がもっぱら第一次史料の渉猟・分析にもとつく基礎的研究である所以である。