著者
山内 智彦 菅野 晶夫 市村 恵一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.556-558, 2011 (Released:2011-10-21)
参考文献数
6

小児インフルエンザ感染症における麻黄湯の呼吸器合併症に対する効果について検討した。呼吸器系に作用する薬の使用例は,抗ウイルス薬群166例中64例(39%),麻黄湯群80例中12例(15%)と,麻黄湯群で有意に少なかった(P 〈 0.01)。しかし,呼吸器合併症に対する追加治療を行った症例は,抗ウイルス薬群166例中34例(21%),麻黄湯群80例中9例(11%)で,明らかな差を認めなかった(P = 0.07)。追加治療例は,気管支喘息の既往のない例においては,抗ウイルス薬群107例中19例(18%),麻黄湯群67例中4例(6%)と有意差を認めたが(P = 0.045),気管支喘息の既往のある10歳未満の例については,抗ウイルス薬群57例中15例(26%),麻黄湯群5例中4例(80%)であり,症例数は少ないが,後者が有意に多く(P = 0.047),今後注意を要する。
著者
山内 智彦 横山 秀二 小川 洋
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.194-201, 2016

<p> PR3-ANCA が陽性であった結核性中耳炎の1例を経験した。 症例は65歳男性。 当科初診の6ヵ月前より左難聴, 耳鳴あり, 他院でも中耳炎と診断された。 プレドニゾロン, ミノサイクリン, レボフロキサシンと投与されるも改善を認めず, 当科受診し, 左鼓膜穿孔および耳漏が認められた。 当初は PR3-ANCA 陽性, 尿蛋白陽性から ANCA 関連血管炎性中耳炎 (Otitis Media with ANCA Associated Vasculitis: OMAAV) を最も疑った。 最終的には胸部レントゲン上, 左肺野に空洞性病変を認めることと, 喀痰・耳漏ともに抗酸菌染色, 結核菌 PCR, 抗酸菌培養すべて陽性であることから, 肺結核を伴う結核性中耳炎と診断した。 リファンピシン, イソニアジド, ピラゾナミド, エタンブトールで加療し軽快に至った。<br> ANCA は ANCA 関連血管炎以外に, 結核や関節リウマチでも陽性を示すことがある。 OMAAV と診断する際には結核性中耳炎の否定が重要である。</p>