著者
犬塚 美輪 三浦 麻子 小川 洋和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.35-47, 2022-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

本研究では,大学での授業において,試験時に参照するためにノートをまとめ直す(事後ノート作成)方略に関する認知とその変化を検討するとともに,作成された事後ノートの質的特徴と成績の関連を検討した。研究1(n=171)では,講義科目において,試験時に参照できる場合に事後ノート作成の有効性や工夫の認知が高く,コストが低く認知されることが示された。また,作成された事後ノートの記述量と図の使用頻度が事実問題の成績を予測した。研究2(n=114)では演習科目において中間テストと事後ノート作成を繰り返した。期末試験問題のうち,事実問題には事後ノートの記述量と体制化の指標の正の効果,まとめ文をそのまま写すことの負の効果が見られた。知識適用問題と説明問題では記述量の効果は有意ではなく,体制化とまとめ文の写しの有無が成績を予測した。方略としての認知は,工夫の認知に有意な変化が認められたが効果量は小さかった。研究3(n=45)では,演習科目において事後ノート作成の繰り返しに加え明示的教示を実施した。作成された事後ノートの体制化の指標が知識適用問題の成績を予測する結果が得られ,方略の認知に関しては,工夫の認知が有意な上昇を示した。
著者
岩永 正子 Nader Ghotbi 小川 洋二 乗松 奈々 山下 俊一
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.266-270, 2006-09

近年18-Fポジトロン放出放射性同位核種を用いたPET(positoron emission tomography)およびPET/CTが悪性腫瘍などの臨床画像診断分野で急速に普及している。しかし,日本と欧米ではPET(PET/CT)の臨床応用に極めて異なる点がある。欧米ではPETは主として確定診断・ステージング・治療後フォローアップなどの癌診療に適用されているが,日本ではそういった癌診療以外に,無症状の健康人に対する癌検診の適用が20%も占めていることが特徴である。PETガン検診の急速な普及の背景には,PET検診センターと旅行会社がタイアップした「PET検診ツアー」ブーム,「数ミリの極微小のがんが発見でき,これまでの検査より癌の発見率が高い」「被曝線量は2.2mSvと年間に受ける自然被曝線量よりも低く安全」という偏った情報のみがマスメディアで過剰宣伝されていることなどが考えられている。日本では以前から医療用被曝の割合が高いことが知られ,PET/CTによる癌検診の普及により新たな医療被曝の増加が懸念される。PET検査の18-Fから出るγ線のエネルギーは高く(511 KeV)被検者だけでなく介護者・医療スタッフの職業被曝の問題もある。PET(PET/CT)の臨床腫瘍学における検査の妥当性・有効性については欧米から多くの報告があるが,PET(PET/CT)による一般健康人の癌検診(いわゆるマス・スクリーニング)は欧米では行われていないこともあって,その妥当性と放射線被曝について評価した研究は非常に少ない。そこで我々は,既知論文・PETモデルセンター・日本人癌罹患率などのデータをもとに,無症状の一般健康人を対象にしたPET(PET/CT)癌検診の検査の妥当性と放射線被曝線量を評価した。
著者
齋藤 暢宏 小川 洋
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
CANCER (ISSN:09181989)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.21-24, 2019-08-01 (Released:2019-09-03)
参考文献数
12

A total of 42 specimens of aegathoid stage, immature of cymothoid isopod (Crustacea), were investigated on the basis of sample collected by a shore seine from the coast of Katase (Fujisawa, Kanagawa Pref.), inner part of Sagami Bay, Pacific coast of central Japan, on 24 October 2015. There were identified as Nerocila phaiopleura Bleeker, 1857. The morphological characters of them were similar to descriptions and illustrations of that of previous records. The relationship of body length and maximum body width of all specimens of aegathoid stage of N. phaiopleura collected through in our previous studies on Japanese cymothoid isopods including present study are regressed to linear equation with high correlation coefficient. These isopod specimens could be separated to three other groups by distribution frequency of their body lengths: 1st group, 8 specimens, 8.1–11.9 mm BL; 2nd group, 43 specimens, 13.5–18.0 mm BL; 3rd group, 1 specimen, 20.4 mm BL.
著者
柳田 亮 小川 洋二郎 水落 文夫 鈴木 典 高橋 正則 岩崎 賢一
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.417-422, 2012 (Released:2012-06-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Objective: Altitude training is frequently used for athletes requiring competitive endurance in an attempt to improve their sea-level performance. However, there has been no study in which the mechanisms by which spontaneous arterial-cardiac baroreflex function changes was examined in responders or nonresponders of altitude training. The purpose of this study was to clarify the different effects of altitude training on baroreflex function between responders and nonresponders. Methods: Twelve university student cross-country skiers (6 men, 6 women; age, 19±1 years) participated in the altitude training in a camp for 3 weeks, which was carried out in accordance with the method of Living High-Training Low. Baroreflex function was estimated by transfer function analysis before and after the training. Results: The responders of the training were 3 men and 2 women, and the nonresponders were 3 men and 4 women. In the responders, the transfer function gain in the high-frequency range significantly increased after the training (28.9→46.5 ms/mmHg p=0.021). On the other hand, no significant change in this index was observed in the nonresponders (25.9→21.2 ms/mmHg p=0.405). Conclusion: As indicated by the results of transfer function gain in the high-frequency range, the baroreflex function in the responders increased significantly after the altitude training, whereas no significant change was observed in the nonresponders.
著者
田中 芳夫 小川 洋司
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.61-67, 1990
被引用文献数
5

温州ミカンを対象とした果実収穫ロボット用視覚センサの開発を目的として, パソコンベースの色彩画像処理による果実検出法を検討した。<br>カラーTV出力を容易に利用できる手法として, カラー濃淡画像の判別しきい値法によるしきい値処理および色差信号による特定色度領域の抽出法を検討し, それぞれの手法を直射日光下の野外の果樹園における画像に対して適用した。いずれの方法も, 反射, 影等の外乱下で良好に果実を検出することが可能であった。
著者
小川 洋
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.3, pp.140-146, 2013-03-20 (Released:2013-06-28)
参考文献数
36
被引用文献数
1

サイトメガロウイルス(CMV)はヘルペスウイルスに属し,免疫健常な宿主に感染した場合,無症候性または軽症の症状を呈するのみで,初感染後宿主の体内に潜伏感染し,生涯宿主と共存するという特徴を持つ.CMV 感染で問題となるのは胎内感染と,免疫不全に陥った場合における感染,再活性化である.聴覚障害は胎内感染によるものが主体である.CMV 胎内感染症は,先天性ウイルス感染症の中で,最も頻度が高いと言われ出生時無症候であっても,聴覚障害,精神発達遅滞などの障害を遅発性に引き起こすことが知られている.胎内感染に伴う神経症状では聴覚障害の頻度が高く,先天性高度難聴の原因としてCMV 感染が高い割合を示すことが明らかになってきた.本稿ではCMV の特徴とCMV 感染による聴覚障害の疫学,感染モデルにおける検討,治療に関して解説する.
著者
山内 智彦 横山 秀二 小川 洋
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.194-201, 2016

<p> PR3-ANCA が陽性であった結核性中耳炎の1例を経験した。 症例は65歳男性。 当科初診の6ヵ月前より左難聴, 耳鳴あり, 他院でも中耳炎と診断された。 プレドニゾロン, ミノサイクリン, レボフロキサシンと投与されるも改善を認めず, 当科受診し, 左鼓膜穿孔および耳漏が認められた。 当初は PR3-ANCA 陽性, 尿蛋白陽性から ANCA 関連血管炎性中耳炎 (Otitis Media with ANCA Associated Vasculitis: OMAAV) を最も疑った。 最終的には胸部レントゲン上, 左肺野に空洞性病変を認めることと, 喀痰・耳漏ともに抗酸菌染色, 結核菌 PCR, 抗酸菌培養すべて陽性であることから, 肺結核を伴う結核性中耳炎と診断した。 リファンピシン, イソニアジド, ピラゾナミド, エタンブトールで加療し軽快に至った。<br> ANCA は ANCA 関連血管炎以外に, 結核や関節リウマチでも陽性を示すことがある。 OMAAV と診断する際には結核性中耳炎の否定が重要である。</p>
著者
新居 直祐 瀋 春香 小川 洋平 崔 世茂
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.411-414, 2004-09-15
被引用文献数
1 13

ビワの根の内皮側数層の皮層細胞にみられる細胞壁の内部生長と内皮細胞に形成されるカスパリー線の形成過程を検討した.根の横断面から観察して,皮層細胞の肥厚は細胞壁の内部生長とみられ,その拡大の最終段階ではラグビーボール状を呈した組織は細胞の半分程度を占有するまでに肥厚した.したがって,若い根では,内皮に接した1層目の皮層細胞の内部生長組織がネックレス状に1重のリングを形成した.根の齢が進むにつれて,内皮から2層目の皮層細胞にも細胞壁の内部生長が確認された.根の維管束の発達につれて,カスパリー線の自家蛍光が蛍光顕微鏡によって明瞭に観察できるようになった.二次維管束の発達とともに,細胞壁の内部生長を示した皮層組織と内皮組織の間に離脱帯が形成され,皮層が離脱する段階では内皮の細胞層数が増加し,カスパリー線も数層に増大した.また,根から皮層部が離脱する段階になると,内皮の外層はコルク様物質が蓄積するようになった.皮層細胞の細胞壁の内部生長と内皮のカスパリー線の形成過程の時間的差異からみて,皮層細胞の細胞壁の内部生長はカスパリー線と同様に,根からの水分や溶質の損出を防御するのに機能しているものと考えられる.
著者
曷川 元 小川 洋二郎 青木 健 柳田 亮 岩崎 賢一
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.508-513, 2012 (Released:2012-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2

Objectives: Acute hypoxia may impair dynamic cerebral autoregulation. However, previous studies have been controversial. The difference in methods of estimation of dynamic cerebral autoregulation is reported to be responsible for conflicting reports. We, therefore, conducted this study using two representative methods of estimation of dynamic cerebral autoregulation to test our hypothesis that dynamic cerebral autoregulation is impaired during acute exposure to mild hypoxia. Methods: Eleven healthy men were exposed to 15% oxygen concentration for two hours. They were examined under normoxia (21% O2) and hypoxia (15% O2). The mean arterial pressure (MAP) in the radial artery was measured by tonometry, and cerebral blood flow velocity (CBFv) in the middle cerebral artery was measured by transcranial Doppler ultrasonography. Dynamic cerebral autoregulation was assessed by spectral and transfer function analyses of beat-by-beat changes in MAP and CBFv. Moreover, the dynamic rate of regulation and percentage restoration of CBFv were estimated when a temporal decrease in arterial pressure was induced by thigh-cuff deflation. Results: Arterial oxygen saturation decreased significantly during hypoxia (97±0% to 88±1%), whereas respiratory rate was unchanged, as was steady-state CBFv. With 15% O2, the very-low-frequency power of CBFv variability increased significantly. Transfer function coherence (0.40±0.02 to 0.53±0.05) and gain (0.51±0.07 cm/s/mmHg to 0.79±0.11 cm/s/mmHg) in the very-low-frequency range increased significantly. Moreover, the percentage restoration of CBF velocity determined by thigh-cuff deflation decreased significantly during hypoxia (125±25% to 65±8%). Conclusions: Taken together, these results obtained using two representative methods consistently indicate that mild hypoxia impairs dynamic cerebral autoregulation.
著者
松本 英彦 小川 洋樹 豊山 博信 柳 正和 西島 浩雄 愛甲 孝
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.77-84, 2002-04-20

目的・方法.術前あるいは術後に病名を告知されている肺癌術後の患者・家族それぞれ67名を対象にアンケート調査を行った.結果.患者の4割が進行度に関係なく再発が不安と回答した.さらに患者にとっては生きがい・心のよりどころ・気がかりなのも家族であった.また患者の半数は告知を受けたショックから1週間以内に立ち直っており,患者・家族の8割以上が今回の患者への告知を肯定していた.一方,一般的な質問として早期癌患者に対する告知については患者・家族の8割以上が肯定していたが,進行癌患者に対してはともに6割以上が慎重であった.さらに患者は告知を希望するが家族が患者本人への告知を希望しない場合には半数以上が,患者も家族も告知を希望しない場合は7割以上が告知に対して慎重であった.結論.今後は,我々医療従事者は患者各々の心理状態や家族関係も念頭に置いた告知の方法を身につけておく必要があると考えられた.