著者
本間 環 山口 五十磨 中嶋 正敏 室伏 旭 右田 一雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.358-365, 1995-07-01
被引用文献数
1

スギ(Cryptomeria japonica D. DON)の伸長成長および花芽形成は、他の針葉樹と同様にジベレリン(GAs)の投与によって促進される。このことは、これらの生理現象が内生GAsによって調節されている可能性をも示している。しかし、針葉樹の内生GAsに関する知見は少ない。これまでに、針葉樹の内生GAsの報告はマツ科の4種に限られている。一方、スギのジベレリン様物質は矮性イネ「短銀坊主」によるバイオアッセイにより確認されているものの、その同定は末だ報告されていない。本研究では、内生GAsとスギの生理学的および形態学的変化との関連を解明する研究の第一段階として、花粉に含まれる内生GAsの分析を行った。その結果、高速液体クロマトグラフィーにより精製した試料を「短銀坊主」によるバイオアッセイおよびエンザイムイムノアッセイ(ELISAs)を用いて分析し、GA_1および/またはGA_3、GA_4、GA_9、GA_<12>、GA_<15>の存在を推測した。それらのうちGA_9、GA_<12>およびGA_<15>をガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により同定した。しかしながら、ELISAによりその存在が示唆されたGA_1および/またはGA_3とGA_4については、含有量が少ないためにGC/MSあるいはGC/SIMのいずれにおいても同定することはできなかった。これらの結果から、スギの花粉にはearly-non-hydroxylation pathwayが主要な生合成経路として機能している可能性が示された。