著者
山口 勇人 福岡 清二 中村 正則 荏原 徹 木村 聡
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.543-547, 2014 (Released:2015-03-06)
参考文献数
6

糖尿病患者は年々増加の一途をたどり,それに伴い合併症である壊疽も増加している.壊疽部からは耐性株も検出され,予後に影響を与える.このため当院にて糖尿病性壊疽で下肢切断に至った症例をもとに検出菌の種類と抗菌薬感受性を集計し,予後との関連を追跡した.24名の患者から57菌株が検出され,内訳はグラム陽性球菌62%(35株),グラム陰性桿菌33%(19株),グラム陽性桿菌5%(3株)で,複数菌検出症例は15名であった.MSSA(Methicillin-sensitive Staphylococcus aureus)をはじめとする皮膚常在のグラム陽性球菌が多く認められ,MRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)は1名のみであった.患者の術後経過をみると7割(17名)の症例が経過良好で退院,3割(7名)が再手術となり8%(2名)が手術以外の原因で死亡した.使用された抗菌薬はCEZ(Cefazolin)が8名と最も多く,次いでPIPC(Piperacillin)5名,IPM/CS(Imipenem/cilastatin)4名,VCM(Vancomycin)4名,MEPM(Meropenem)2名などが使われていた.術後経過不良例では当初CEZを使用した例が多く認められた.複数菌が検出された15名のうち再手術となった症例は5名であり,菌種が多いほど予後は不良であることが示唆された.CEZ耐性の菌株が検出された症例は全体の約6割に上り,とくに透析やASO(Arteriosclerosis obliterans)合併例に多く術後経過不良であったため,周術期の抗菌薬選択には注意が必要と思われた.