著者
山口 和巳
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

幼稚園児を対象にフッ化物配合歯磨剤使用後の口腔内残留フッ素量を測定した。対象となった幼稚園は,園医が週1回歯みがき指導を行っており,園児の歯みがき技術は比較的一定している。169名の園児のうち,園児自身で歯みがきをする習慣があり,かつ歯磨剤を併用している園児で,本実験に参加を希望する園児39名を対象とした。その内訳は,3,4歳児19名,5歳児20名である。使用した歯磨剤はフッ化ナトリウム配合で,表示フッ素濃度は1000ppmの市販品である。日頃使っている量の歯磨剤をつけさせた後,十分な監督のもとで,日常行っている方法と時間で歯みがきをさせた。その後の洗口には8mlの蒸留水の入った紙コップを用意し,自由に洗口させた。ブラッシング途中と終了時の吐き出し液ならびにブラッシング後に使用した液,歯ブラシ上に残留した歯磨剤をロ-トによって回収し,微量拡散法を用いて口腔内残留フッ素量を求めた。年齢別の使用歯磨剤量および口腔内残留フッ素量とその割合は順に,3,4歳児で0.29±0.15g,48.0±35.6mug,16.4±7.7%,5歳児では0.40±0.34g,62.3±68.2mug,14.3±9.7%,全体では0.35±0.27g,55.3±54,6mug,15.3±8.7%となった。平均値の差の検定では両者にいずれも有意差はなかったが,使用歯磨剤量,口腔内残留フッ素量では5歳児にやや多い傾向が示された。しかし,残留率としては3,4歳児のほうがやや多かった。以上の結果より,1000ppmF配合歯磨剤を幼児が1日1回用いてブラッシングした場合の口腔内残留フッ素量は約0.055mg,2回では0.111mg,3回では0.166mg程度であり,フッ素症歯の発生など慢性毒性の心配はない。また,う蝕予防のために,他のフッ化物局所製剤を併用しても問題はないものと思われた。