著者
石井 信之 伊藤 寿樹 武藤 徳子 室町 幸一郎
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究目的は、MG使用によるSAR症状改善効果を分析し、SAR症状発症における唾液の役割を明らかにすることであった。MG装着前およびMG装着後の唾液流速を分析し、唾液中のIgAおよびIgG4の量を測定した。 MG装着によるアレルギー性鼻炎症状と唾液各因子の相関関係を評価した。唾液中IgA濃度はSAR患者で有意に減少。 SAR症状はMG装着により有意に改善された。唾液流量および単位時間当たりのIgA総量は、MGの使用と共に有意に増加したが、IgG4総量は変化しなかった。MG装着は、単位時間当たりのIgA総量を増加させることによってSARのアレルギー性鼻炎症状を改善することが明らかにされた。
著者
山口 和巳
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

幼稚園児を対象にフッ化物配合歯磨剤使用後の口腔内残留フッ素量を測定した。対象となった幼稚園は,園医が週1回歯みがき指導を行っており,園児の歯みがき技術は比較的一定している。169名の園児のうち,園児自身で歯みがきをする習慣があり,かつ歯磨剤を併用している園児で,本実験に参加を希望する園児39名を対象とした。その内訳は,3,4歳児19名,5歳児20名である。使用した歯磨剤はフッ化ナトリウム配合で,表示フッ素濃度は1000ppmの市販品である。日頃使っている量の歯磨剤をつけさせた後,十分な監督のもとで,日常行っている方法と時間で歯みがきをさせた。その後の洗口には8mlの蒸留水の入った紙コップを用意し,自由に洗口させた。ブラッシング途中と終了時の吐き出し液ならびにブラッシング後に使用した液,歯ブラシ上に残留した歯磨剤をロ-トによって回収し,微量拡散法を用いて口腔内残留フッ素量を求めた。年齢別の使用歯磨剤量および口腔内残留フッ素量とその割合は順に,3,4歳児で0.29±0.15g,48.0±35.6mug,16.4±7.7%,5歳児では0.40±0.34g,62.3±68.2mug,14.3±9.7%,全体では0.35±0.27g,55.3±54,6mug,15.3±8.7%となった。平均値の差の検定では両者にいずれも有意差はなかったが,使用歯磨剤量,口腔内残留フッ素量では5歳児にやや多い傾向が示された。しかし,残留率としては3,4歳児のほうがやや多かった。以上の結果より,1000ppmF配合歯磨剤を幼児が1日1回用いてブラッシングした場合の口腔内残留フッ素量は約0.055mg,2回では0.111mg,3回では0.166mg程度であり,フッ素症歯の発生など慢性毒性の心配はない。また,う蝕予防のために,他のフッ化物局所製剤を併用しても問題はないものと思われた。
著者
山田 良広
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

法医学における歯の有効性は硬組織としての保存性の高さに起因する個人識別における役割である。従来は歯の解剖学的形態による個人識別への応用が主であったが、最近の遺伝子工学の発展がDNA分析の可能性を広げ、歯学においても、歯に含まれるDNAを利用することで新しい個人組織への情報源としての歯の可能性を示唆した。本研究は、鑑定試料として嘱託を受けた歯を想定し、実験室で各種条件下におかれていた歯からDNAを抽出、歯髄由来DNAの法医DNA鑑定における応用の可能性を研究目的とした。平成8年度は、歯髄が変性消失している歯からの有効なDNA抽出法として、髄腔壁を含む象牙質切片からDNAを抽出しそれをキレックススピンカラムを用いて精製した結果、PCR反応において良好な増幅が可能であった歯髄由来DNAを得ることができた。平成9年度は、精製された歯髄由来DNAをテンプレートとして用い、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のDループをPCR法により増幅しその多型領域の塩基配列を決定するmtDNAダイレクトシーケンス法への応用、さらに広く法医DNA鑑定で用いられているDIS80、HLADQα領域を増幅するプライマー、TH01などShort Tandem Repeat領域を増幅するプライマーをそれぞれ用いたPCR法へ応用したところ、対照とした新鮮血由来DNAをテンプレートとした結果と同等の結果を示した。身元不明死体や損壊の著しい死体で歯が唯一の身元確認の決めてになることは衆知のことである。従来の形態を主とした個人識別にDNA分析を応用することは今後不可欠になると思われ、歯由来DNAがその個人のDNAとしてDNA鑑定に用いることが可能であるといった今回の研究実績はその根拠となると思われる。
著者
木本 克彦 星 憲幸 斉田 牧子 杉本 昌弘
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、咬合咀嚼刺激と唾液成分との関連を明らかとするため、メタボローム解析を用いて、咬合咀嚼刺激による唾液中の代謝産物の変化を網羅的に解析した。その結果、臼歯部欠損患者群と残存患者群の唾液代謝産物を比較したところ、全部で137 のピーク値が同定され、主成分分析より2群間に代謝プロファイルの違いが認められた。また、臼歯部残存患者における安静時唾液群と刺激唾液群の比較を行ったところ、全部で116 の唾液代謝産物のピーク値が同定され、主成分分析より2群間にに代謝プロファイルの違いが認められた。以上の結果から、咬合咀嚼刺激が代謝産物レベルで唾液成分へ質的な変化を与えていることが示唆された。
著者
三橋 晃
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度実験の目的は,試作されたペースト/ペーストタイプ光硬化型グラスアイオノマーセメント(GIC)の有用性を調べるために,接着界面の形態学的観察ならびにCa分布,Fの歯質拡散性を計測するとともに,接着強さの測定を行った.実験材料には,レギュラー(FR-100)とフロー(FF-101)の2種類の光硬化型GIC、コントロールとして,粉/液タイプ光硬化型GICのFuji II LC(GC)と従来型GICのFuji Type II (GC)を用いた.接着界面の観察およびCa, Fの測定のために、各セメントを充填したウシ歯冠象牙質試料を37℃精製水中に1日保管後,アルゴンイオンエッチングを施し,EPMA-8705(Shimadzu)にて,接着界面のCaとFの点面分析を行った.剪断接着試験ではウシ歯冠部象牙質を#600の耐水研磨紙にて研磨し,接着面積をφ4.6mmに規定し,各歯面処理後に37℃精製水中に1日,1週,1ヶ月保管後インストロン型万能試験機にて,C.H.S.1mm/minで,剪断接着強さを算出した.接着界面の観察では,Fuji II LCに約1μm弱の明瞭な樹脂含浸層様構造物が観察されたのに対し,ペースト/ペーストタイプGICでは,明瞭な構造物は観察されないもののそれぞれ良好な接合状態を示した.象牙質へのFの平均拡散距離は,1週水中保管後で接着界面からFR-100で8.98μm, FF-101で8.53μmと,Fuji II LCの5.09μmを超える値が示された.ペースト/ペーストタイプGICの剪断接着強さは,粉/液タイプGICに比較し有意に高い値が示され,本材料の操作性及びぬれの良さによる優れた窩壁密着性が接着強さを上昇させる要因になっていることが考えられた.以上の結果から,新規2種ペースト/ペーメトタイプ光硬化型GICは,優れた歯質接着性,フッ化物(F)徐放性,操作性を有する修復材料であることが示された.
著者
富山 潔 寺中 敏夫 向井 義晴
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マイクロコスムバイオフィルムを用いたin vitroモデルが,口腔内を模した,表層下脱灰病巣を誘発できることを確認・報告した.本モデルを用いて作成したバイオフィルムにSPRGフィラー含有歯磨材による処理を行なうことにより,顕著に脱灰を抑制することを報告した.また,渋柿由来の縮合型タンニンを含有させた食品・化粧品等の原料(PancilⓇ PS-M:リリース科学工業株式会社)が,濃度依存的にガラス上で形成したバイオフィルムの生菌数を抑制することを報告した.
著者
木下 靭彦 川瀬 俊夫 小園 知 田畑 泰彦 横矢 重俊 根岸 秀幸
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.生吸収性scaffoldの作成.Collagen溶液にPGA繊維を加え、凍結乾燥と熱脱水架橋により、collagen spongeよりも強度と細胞侵入性に優れたPGA/collagen spongeを開発した.さらに、これにUV処理を加えることにより強度の高いPGA/collagen(UV)sponge)を得た.2.骨髄間葉系幹細胞(BMSC)の増殖、分化におけるDexamethasone(Dex)、bFGFの効果.ラットBMSCの単層培養で検討したころ、DexとbFGFはそれぞれALPase活性と細胞増殖を促進し、同時併用はALPase活性に相乗効果とbone noduleの活発な形成を示した.3.生体吸収性scaffoldsにおけるBMSCの増殖、分化能.ラットBMSCをPGA/collagen sponge, PGA/collagen(UV)spongeで三次元培養したところ、(1)両spongeとも培養後の収縮が軽度で、pore構造が良好に保たれ、sponge内部への細胞の侵入が認められた。(2)PGA/Collagen(UV)Spongeではcollagenがより多く残り、ポア内での細胞の接着,細胞外マトリックスの形成が良好であった。(3)細胞増殖とALPase活性はPGA/collagen(UV)sponge群で最も高生く、scaffoldとしての有用性が示唆された.4.BMSCの三次元培養骨の骨形成能.1)各種培地で培養したラットBMSCとβ-TCPの複合体を、同系ラットの背部皮下に移植したところ、Dex+βグリセロリン酸+bFGF添加培養液群で良好な骨形成がみられた。2)上記BMSC/β-TCPの複合体を成犬下顎骨区域切除部に自家移植したが、欠損部の骨連続性を回復できなかった。BMSCの培養期間及び骨形成を促進する生理活性因子の適切な局所導入法の確立が検討課題とされた。
著者
バワール ウジャール
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

BRAK/CXCL14はどの正常細胞でも発現しているケモカインであり、種の異なるマウスとヒトのBRAK/CXCL14のアミノ酸配列が非常に高い相同性を示すことから、非常に普遍的かつ重要な機能を持つ分子と考えられる。BRAK/CXCL14のin vivoにおける腫瘍抑制機構を明らかにすることは、口腔癌ばかりでなく、種々の癌の進展機構の解明と、将来における癌のドーマント療法開発の分子標的として有望であり、また、全ての正常細胞で発現していることから将来における遺伝子導入等における治療において副作用の少ない新しい標的分子と考えられる。
著者
横山 三菜
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ホスホセリンをポリマーとしたポリホスホセリンやホスホセリンとアスパラギン酸の1対1の共重合体がアパタイトに吸着し、硬組織の形成を促進する。牛歯エナメル質表面に作用させた場合、ポリホスホセリンでは、硬組織形成が早く、エナメル質小窩裂溝入口を硬組織で塞いでしまうため、ホスホセリンとアスパラギン酸の共重合体にて、小窩裂溝内部の石灰化を促す割合を検討する必要がある。
著者
高橋 理
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

中枢神経系の主要な興奮性伝達物質であるグルタミン酸の脳内分布については、従来おもにその合成酵素であるglutaminaseを免疫組織化学的に同定することにより解析が進められてきた。本研究はグルタミン酸に対するポリクロナール抗体を用いて、三叉神経運動核と三叉神経感覚群におけるグルタミン作動性の神経細胞体と神経終末を同時に検出し解析することを目的とした。実験には雌Wistar系ラットを用いた。実験動物を2.0%パラホルムアルデヒドと0.25%グルタールアルデヒドの混合溶液にて灌流固定を施した後に、脳幹部の凍結連続切片を作製し、免疫組織化学的にグルタミン酸様免疫活性を示す神経細胞体と神経終末についてそれぞれFITCを用いて標識し、蛍光顕微鏡下に観察した。実験の結果、グルタミン酸免疫陽性の神経線維と終末は、解剖学的に定義される三叉神経運動核の周囲の小細胞性網様体には少数が観察されるものの、同核内においては運動ニューロンの細胞体と近位樹状突起に接してごく少数しか認められなかった。これに対してグルタミン酸免疫陽性の神経細胞体は三叉神経主感覚核に多数、三叉神経脊髄路核の吻側亜核背内側部と腹外側部に少数、そして同中位亜核に多数が観察された。これら三叉神経感覚核群の内側に接する橋・延髄の小細胞性網様体には免疫陽性の神経細胞体と神経線維が多数観察された。これらの結果より、従来報告されてきた、三叉神経運動核に対するグルタミン酸作働性の前運動ニューロンは、三叉神経運動ニューロンの細胞体や近位樹状突起というよりはむしろ、同核内において遠位樹状突起上にシナプス結合する事が示唆された。今後、この部位において免疫電顕を用いたシナプスの構造解析が重要と考えられる。
著者
大谷 進
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

アミノ酸のラセミ化反応を利用し、従来より正確な歯からの年齢推定法を確立するため各種実験を行った。1.pHによる影響:pH9の環境下で象牙質のラセミ化反応速度がもっとも速く、ついで水、pH4の順で、アルカリ性で速く、酸性で遅いことが認められました。しかしながら、実際のラセミ化は僅かで、年齢推定にはほとんど影響がみられず、死亡時の年齢が算出されるようでありました(環境温度15℃の場合)。2.固定液の影響:正確な年齢推定を行うには、鑑定資料の他に年齢既知の数本の同顎同名歯の対照歯が必要です。このため対照歯を95%エタノール、10%ホルマリンおよび10%中性ホルマリンの固定液に保存された場合について検索しました。その結果、象牙質アスパラギン酸のラセミ化反応速度は、10%中性ホルマリン>10%ホルマリン>95%エタノールの順に速く認められました。しかし、ラセミ化反応は歯を15℃(室温)の固定液に保存された場合、ほとんど促進されず、10年から20年程経過した歯でも抜去時と変わらない結果が得られました。3.ピンク歯について:実際の鑑定例では歯がピンク色に着染している現象が時々見られます。この場合、通常の方法では、年齢が低く算出されることがあります。しかし、資料を粉末化し何回か洗浄すると実際年齢に近い値が算出される知見が得られました。4.加熱の影響:ラセミ化反応は環境に左右され、とくに温度に強く影響されます。しかし、焼死体で加熱された歯でも非コラーゲン性蛋白質を用いると、ほぼ正確に年齢を求められることを明らかにしました。以上、歯からの年齢推定に関する数々の所見が得られ、ラセミ化法の信頼性をさらに高めることが出来たものと考えます。
著者
堀江 秀典 井上 宏子
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

酸化型ガレクチン-1(GAL-1/Ox)はマクロファージを刺激しサイトカインIL-6の発現上昇を促進する傾向が見られたが、更に実験を重ねて統計的有意差を確認する必要がある。IL-1βやLIFの発現を有意には上昇させなかった。次にiNosを加え更に実験を重ねて統計的検討を行った結果GAL-1/Oxは1ng/mlの濃度で有意にiNOSの発現を上昇させた。iNOSは酸化作用のあるNO産生に関与する酵素で酸化型ガレクチン-1刺激によりマクロファージ内でその発現が上昇する。このNOは細胞外に分泌され、神経細胞やその軸索並びにシュワン細胞から分泌された還元型ガレクチン-1を酸化し、酸化型ガレクチン-1とする作用が考えられる。マクロファージから分泌されたNOの作用についてはin vitro並びにin vivoの研究から今後明らかにしていく計画である。次に炎症下でマクロファージを刺激する物質LPS(lipopolysaccharide)のマクロファージへの作用に酸化型ガレクチン-1がどのような作用を示すか検討を行った。10ng/ml,100ng/mlのLPSをマクロファージに作用させそのときのIL-1β、IL-6,LIF, iNOSのmRNAの発現変化を各作用時間1h、2h、3h、4hについて解析した。10ng/mlではIL-1β、LIF, iNOSのmRNA発現を上昇させたが、IL-6につてははっきりした効果が見られなかった。100ng/mlでは4種類の因子の発現上昇がはっきり見られた。この系に1ng/mlの酸化型ガレクチン-1を作用させると、4時間作用させた群では明らかに発現の減少が見られた。その抑制効果は酸化型ガレクチン-1の濃度を0.1ng/ml,0.01ng/mlと下げていくと次第に減少し、LPS10ng/mlでは0.01ng/mlの酸化型ガレクチン-1の抑制効果が、LPS100ng/mlでは0.1ng/ml以下の酸化型ガレクチン-1の抑制効果が見られなかった。以上の結果より酸化型ガレクチン-1がLPSのマクロファージ刺激作用を抑制することが示唆された。今後実験を重ねこの効果が統計的に有意であることを確認し、in vivoでの抑制効果を検討することにより、酸化型ガレクチン-1を炎症抑制因子として確立していく計画である。