著者
山口 悟史 金 多仁
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2020-MPS-131, no.4, pp.1-6, 2020-12-10

ダムの放流計画を自動作成するための数理最適化手法「プログレッシブ動的計画法」を提案する.近年の水害の頻発を受け,従来にない放流計画が求められている.ダム放流量を急激に変化させない「放流の原則」を満たしつつ,大雨に先立ってダムの容量を空けておく「事前放流」,下流の河川流量を小さく抑えるために複数のダムからタイミングをずらして放流する「ダム群連携操作」を実現するために,提案手法は離散微分動的計画法を繰り返すことで段階的に解像度を向上させる.これにより提案手法は放流量を高い解像度(1m3/s)で探索する.N 川ダム群を対象にシミュレーション実験を行った結果,現在のダム操作規則では 3 ダムとも緊急放流に至るケースであっても,提案手法では緊急放流を避け,かつ下流河川のピーク流量を 41% 下げる解を見つけた.対象期間 1.5 日の最適化に要した時間は 191 秒であった.提案手法がダムの放流計画の自動作成に有用であると結論する.