著者
山口 晴敬
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.133, pp.69-89, 2018-12-25

本研究の目的は,高等学校における先輩教員と初任期の教員の同僚関係について,先輩 教員の初任期の教員へのまなざしに着目し検討することである。学校現場に初めて赴任した初任期 の教員を支える役割を担っている先輩教員は,どのようなまなざしで初任期の教員を見つめて いるのかを探索するため,質問紙調査を実施した。分析に当たっては多重回答結果と,自由記 述回答において計量テキスト分析を用いた。 先輩教員の初任期の教員に対するまなざしは,初任期の教員の「姿勢や行動」に関わること を表したものと,「同僚性」「教職のイロハ」など,「いまここにある」教職遂行に関わることを 表したもの二つに大分された。 すなわち,先輩教員は初任期の教員を,「個人」に着眼点を置いた「姿勢や行動へのまなざし」 と「同僚」に着眼点を置いた「いまここにある教職遂行へのまなざし」で見つめ評価していた。 「いまここにある教務遂行に関わることへのまなざし」は,初任期の教員を否定することと なったが,「姿勢や行動へのまなざし」は,初任期の教員を肯定的に評価するばかりでなく,先輩 教員自らの内省を促す作用も期待できた。また,初任期の教員への期待は,教務遂行に関わる ことばかりではなく,姿勢や行動の両方を含むこととなった。 職場の「同僚」としての初任期の教員へのまなざしは,「いまここにある職務遂行に関わるこ と」のまなざしとなり,初任期の教員を否定的に見つめるということで,同僚関係にはプラス の作用を生まないことが明らかとなった。
著者
山口 晴敬
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.134, pp.63-80, 2019-06-27

本研究の目的は,インタビューによって得られたナラティヴを分析することを通して,高等学校の新任教員が,日々何に悩み,何によって支えられているのかを明らかにすることにある。 新任教員が入職してからどのような経験を踏まえてどのような思いや気づきがあったのか時系列で知るため,2名の新任教員に複数回インタビューを実施した。質問項目は,それぞれのインタビュー時期において,つらいことや苦しいこと,あるいは困難であると感じた出来事は何か,また喜びややりがいは何かである。 新任教員は,教員になって初めて,生徒との関係構築よりも先輩との関係構築が一番困難なことであることに気づき,同僚との関係構築を一番の気がかりとしていた。そして,関係性を築くことができなければ,教職遂行がスムーズにいかないとも考えていた。 また,新任教員から先輩への関係構築の働きかけをしても,先輩からの理不尽な言葉や行動で,教員という職業に対してまで,否定的な気持ちにもなっている。すなわち,同僚(先輩)が,新任教員が教職を遂行する上でのプラスの作用になってはいないということであり,新任教員にとっては同僚との関係構築が,避けて通ることのできない大きな課題となっている。 しかし,「同僚」は,一方で,新任教員を支える存在になることもこの研究によって明らかとなった。多くの場面で新任教員を気遣い,良き気付きを与えている存在として「同僚」や「管理職」がいた。そのような「同僚」や「管理職」の存在が、新任教員の教職遂行を支えていた。 同僚の支援が得られにくい高等学校においても,「同僚」や「管理職」が,新任教員の支えとなっていることは,「新任教員への支援」を考えるときの良き示唆となる。