著者
粂野 文洋 辻村 泰寛 大木 幹雄 山地 秀美
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-40, 2016-06-01

企業で活躍できる実践的なIT人材の育成が大学の情報系学科に対する社会的要請となっている.こうしたなか,ソフトウェア開発の実践的な能力を育成する効果的な手法としてPBL(Project Based Learning)が注目され,多くの大学で導入されている.一方で,周辺地域がかかえる諸課題をNPOや企業と連携して解決することも大学の重要な使命となってきている.著者らは,こうした2つの社会的な要請に応えるため,埼玉県内の複数の地域組織からソフトウェアシステムに係る要請を受け付け,その開発・提供および保守を演習テーマとするPBLを継続的に実施している.実際に利用してもらうシステムの開発・保守をテーマとする演習は,実務に近い状況体験による教育効果が期待できる反面,実施上のリスクや課題も存在する.本論文ではこうしたリスク・課題に配慮したPBLの実践例を提供することを目的に,本PBLの教育的狙い,実施上の課題をふまえた地域連携の仕組み,演習の進め方を提示し,2014年度までの実践状況を示す.その実践結果に基づき,教育効果,リスク分析と対策,連携の仕組みの評価について考察を与える.