著者
間辺 美樹 並木 美太郎 兼宗 進 間辺 美恵子 間辺 広樹
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.16-30, 2018-02-20

コンピュータやスマートフォンなどの電子機器の普及による若者の漢字離れが懸念されている.ところが,一般的な漢字学習法といえば,「繰り返し書く」など機械的反復練習から導かれる「暗記」に主眼が置かれていて,「意味の理解」を重視した漢字学習法についてはこれまで十分に議論されてこなかった.本研究では「漢字1字の意味の理解が熟語の理解につながり,熟語を介して形成される漢字ネットワークを拡大させていくことで,多くの漢字を理解できるようになる」という日本漢字能力検定1級取得者の漢字理解モデルに基づき,学習者に意味の理解の大切さを認識させる目的の漢字学習ソフト「熟語マニア」を開発した.選択肢として提示された複数の熟語の中から,意味を考えれば正しい漢字を選択できるクイズ形式のソフトである.高等学校において「熟語マニア」を用いた実験授業を行った結果,生徒の多くが意味を理解することの大切さを認識するようになった.
著者
奥村 晴彦
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.1-8, 2018-10-30

真偽より共感で情報が選択されるといわれる“post-truth”(脱真実)時代の情報リテラシー教育について論じた.共感ではなく真偽に基づいて情報を選択できるようにするための「ファクトチェック」を取り入れた授業を提案する.ファクトチェックのいろいろな例をあげた.データに基づいて判断するファクトチェックは,高等学校新学習指導要領の数学や情報におけるデータやデータサイエンスを重視する流れとも符合する.
著者
阿部 和広
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.10-18, 2023-06-29

Scratchはプログラミングを学ぶための環境として知られているが,同時にオンラインコミュニティとしての側面も持っている.しかし,教育関係者や保護者は子供たちがそこで行っている活動についてあまり関心を払っていない.2020年に始まった小学校プログラミング教育必修化にともない,Scratchの活用が広がると同時に問題も起こっている.本稿では,Scratchのオンラインコミュコミュニティについて,その歴史や活動内容,問題点について解説し,デジタルシティズンシップの視点から解決策を提案する.
著者
中西 渉 辰己 丈夫 西田 知博
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.75-82, 2015-12-09

プログラミング教育では,テキストでソースコードを記述するテキスト型のプログラミング環境だけでなく,画面上の部品を組み合わせてプログラムを作成する環境も使われている.本研究では,テキスト型の初心者用プログラミング学習環境であるPENで実行できるソースコードを,ドラッグ&ドロップで作ったフローチャートから生成するPenFlowchartを開発し,これを用いて高校生を対象にプログラミング教育を行った.その結果を,PENだけで学習を行っていたときのものと比較して検討を行ったところ,授業の進行(特に序盤の演習)がスムーズになった.また,期末試験におけるプログラミングとフローチャートの変換を行う問題についても点数の向上が見られ,その傾向は成績下位者において顕著であった.
著者
赤澤 紀子 赤池 英夫 柴田 雄登 山根 一朗 角田 博保 中山 泰一 Noriko Akazawa Hideo Akaike Yuto Shibata Ichiro Yamane Hiroyasu Kakuda Yasuichi Nakayama
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.19-34, 2022-10-21

2022年度より,高等学校の「共通教科情報科」は,必履修科目の「情報I」と選択科目の「情報Ⅱ」が設置され,すべての高校生が,プログラミングなどを含む情報の科学的な理解を主とした「情報I」を履修することになる.また,2025年度入試から「情報I」が大学入学共通テストで出題されることが正式に決定された.これにより,各大学の個別入試においても入試科目に「情報」が設置される可能性が増してきた.大学入学試験として情報を出題するためには,大学など出題する側と,受験する高等学校側で,出題内容や範囲,用語などの共通な知識体系が必要となる.しかし現在はまだ,「情報科」の知識体系は明確に定められていない.そこで,本研究では,知識体系の明確化を目標として,「情報I」の教科書で用いられる用語から知識体系に関する考察を行う.
著者
伊藤 一成
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.47-61, 2018-06-06

本論文では,人型ピクトグラムを用いたプログラミング学習環境「Pictogramming(ピクトグラミング)」を提案する.PictogrammingはPictogramとProgrammingを合わせた造語である.ピクトグラムは表現の抽象度の高さから,それを見た人物が自分自身や本人に関わる人物事物を想起させる効果があるといわれている.人型ピクトグラムを人間の動作に模倣して動かす,今回実装したプログラミング学習環境は,構築主義の提唱で知られるPapertが重要視する同調的学習の概念と相性が良い.人型ピクトグラムを変形する“ピクトアニメーション”コマンドと移動の軌跡を図として表示する“ピクトグラフィックス”の2種類のコマンドを併用することで,コンパクトな命令セットで,かつスモールステップ学習可能な環境のため,短時間でピクトグラムのデザイン指針に準じた多様な作品を作成することができる.実際に100人程度の中学生を対象とした実践授業を行い,提案アプリケーションの有用性や教育現場での利活用の展望について観察,アンケート,理解度テストの3点から評価・分析した.観察の結果,“ピクトグラフィックス”を学習した授業で,人型ピクトグラムの動作を学習者自身が模倣する動作が見られた.またアンケート,理解度テストいずれも概して良好な結果を得,同調的学習を喚起させたと思われるアンケート回答もいくつか見られた.ただし,条件分岐を学習する授業については,他の授業よりアンケート,理解度テストともに有意に低い結果となっており,検討・改善の余地がある結果となった.
著者
中山 泰一 中野 由章 角田 博保 久野 靖 鈴木 貢 和田 勉 萩谷 昌己 筧 捷彦
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.41-51, 2017-06-14

高等学校情報科の教科担任の現状を明らかにするため,都道府県教育委員会における臨時免許状の授与と,免許外教科担任の許可の状況を調査した.情報科では,臨時免許状や免許外教科担任が他の教科に比べて突出して多用されていることが明らかになった.本論文では,その調査結果を報告するとともに,わが国の情報教育の取り組みについて述べる.
著者
中山 泰一 角田 博保
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.41-47, 2016-06-01

共通教科「情報」の高等学校学習指導要領では,「多くの情報が公開され流通している現状を認識させるとともに,情報を保護することの必要性とそのための法規及び個人の責任を理解させる」と規定されており,その内容の取扱いとして,「知的財産や個人情報の保護などについて扱い,情報の収集や発信などの取扱いに当たっては個人の適切な判断が重要であることについても扱うこと」と記されている.一方,国,地方自治体,独立行政法人などの行政機関から情報を収集する意義や手続きについてはあまり扱われていない.本稿では,行政機関の公文書という生の情報を収集することは重要であるとの観点から,大学の教職科目の情報科教育法への公文書公開手続きの活用について,実践例とともに議論する.
著者
西田 知博 原田 章 中西 通雄 松浦 敏雄
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.26-35, 2017-02-22

筆者らは,10年にわたり初学者向けプログラミング学習環境であるPENを用いてプログラミングの入門教育を行ってきた.本論文では,情報科学を専門としない学部の全6クラスの情報リテラシ科目のなかで実施した,90分 × 4回のプログラミング演習について述べる.当初は,キーボードから数字を読み込んで計算結果をディスプレイ画面に出力するような例題から始めて逐次・条件分岐・繰返しを学び,最後に図形を描画する単一のコースウェアを用いていた.その2年後,図形描画の例題から始めるタイプのコースウェアも開発し,クラスごとにどちらかのコースウェアを用いて演習を行ってきた.本論文では,2011年度から4年間の授業におけるアンケートおよび試験成績を統計的に分析した.その結果,図形描画をともなう例題を扱う方が,繰返しのようなつまずきやすい学習内容でも,理解度や楽しさを下げることなく学習できていることが分かった.
著者
斎藤 祐一郎 久野 靖
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.7-18, 2015-03-16

コミュニケーションは,企業内でソフトウェア開発を遂行するうえで不可欠である.しかし,現状ではコミュニケーションが苦手なソフトウェア技術者が存在し,新人技術者にも同様の傾向が見られる.そこで筆者らは,新人技術者がソフトウェア開発に必要なコミュニケーションスキルを獲得できるような教育方法を考案し,ソフトウェア技術者予備軍である大学4年生を対象に試行のうえ,有効性を評価した.教育方法には,コミュニケーションの重要性を体感できるケースメソッドとロールプレイング形式を組み合わせたものを採用した.被験者として情報系大学4年生2グループ各3名を集め,コミュニケーションに関する事前指導を片方のグループのみ施した.その結果,事前指導を施したグループにおいて,特に成果物を基にチームメンバと接するコミュニケーションスキルを獲得できたことを確認した.
著者
和田 勉
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-9, 2023-06-29

中国(大陸)・韓国・スリランカに関して,情報教育を中心にそれぞれの国・地域での制度・事情を述べ,それと比較した我が国の情報教育の状況を論じる.中国に関してはカリキュラムと,大学入学試験に情報分野が含まれているかについて紹介し,PISAの中国に関するデータについても論じる.韓国については,中学校と高等学校での情報教育の内容,および大学入試での情報分野の扱いについて述べる.スリランカについては,訪問調査した学校と,2023年現在の同国の社会情勢について紹介する.
著者
井手 広康
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-10, 2023-02-22

令和4年度から始まった「情報I」の教科書にPython,JavaScript,VBA,Scratchの4つのプログラミング言語が使用されたことから,多くの高等学校がいずれかのプログラミング言語を使用して授業を行うことになる.本研究では,クラスごとに4つのプログラミング言語を使い分けて同じ授業内容でプログラミング教育を実践し,最後に大学入学共通テスト「情報」サンプル問題(第2問)を全員に解答させた.サンプル問題の解答結果や事後アンケートの結果から,どのプログラミング言語を授業で使用していても,大学入学共通テストの解答に大きな影響を及ぼす可能性が低いが,各プログラミング言語が持つ特有の表記や仕様により,少なからず解答に影響が生じていることが明らかとなった.
著者
井手 広康
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.8-18, 2022-10-21

令和4年度より高等学校では「情報I」が始まり,プログラミングの分野では,基本的に教科書に記載されたプログラミング言語を用いて授業を行うことになる.また,令和7年度からの大学入学共通テストに「情報」が導入されることから,授業で扱うプログラミング言語と共通テスト「情報」に出題されるDNCLとの違いを意識しながらプログラミング教育を実施する必要がある.そこで本研究では,DNCLと「情報I」の教科書に使用されているPython,JavaScript,VBA,Scratchとの相違点について考察するとともに,試作問題/サンプル問題と教科書に記載されているプログラミング分野の内容について比較を行った.その結果,DNCLと各プログラミング言語には,変数の宣言,ブロックの区切り,オブジェクトの結合,配列/リストの作成と操作,for文の表記などに大きな違いがあること,すべての教科書が試作問題/サンプル問題に出題された内容を網羅できているわけではないことが分かった.
著者
野津田 雄太 高橋 健一 稲葉 通将
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.83-92, 2015-12-09

1990年頃から国内で理系離れが問題視されている.しかし,理系離れの要因として明確なものは存在しない.その分析に寄与するため,文系・理系の大学生の日常生活の習慣や科目の得意・不得意などの状況を調査した.本研究では,著者が所属する大学の学生を対象にアンケート調査を実施し,データマイニング手法を用いて,科目の履修・嗜好などの傾向から文系・理系への進路選択と相関のある要因と,学生の生活習慣から文系・理系学生の日常の傾向について考察を行う.用いたデータマイニング手法は決定木,主成分分析,ベイジアンネットワークである.分析の結果,小学校・中学校からの得意・不得意科目や日常生活における学生の嗜好と学生の文理に相関があることが分かった.
著者
岸本 和理 谷口 義明 井口 信和
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.76-81, 2022-06-23

Webアプリケーションの脆弱性を悪用した主要な攻撃の1つにクロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃がある.Webアプリケーション内のXSS脆弱性を減らすためには,Webアプリケーション開発者が,XSS攻撃および対策手法を学ぶだけでなく,攻撃者視点でXSS脆弱性を発見するための知識やスキルを習得することが重要であると考えられる.そこで本稿では,攻撃者視点を取り入れたXSS演習システムを開発する.学習者はWebブラウザ,仮想ネットワーク上に構築したWebサーバ,攻撃者ホストを使って学習や演習を実施する.情報系学科の学生を対象とした実験の結果,本システムを用いることにより座学と比較してXSS対策の学習を支援できることを確認した.
著者
久野 靖 和田 勉 中山 泰一
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.48-61, 2015-06-19

情報および情報技術は現代社会の基盤となっており,社会の構成員がこれらの内容を身につけてから社会に出ることが重要となってきている.世界の多くの国がこのため,情報教育に注力してきているが,それらの内容とわが国の現状には隔たりがある.本稿では積極的な情報教育を進めている各国の状況を整理・分析し,そのうえでわが国の情報教育が目標とすべきことと,初等中等段階における情報教育の体系的なカリキュラムについて提案する.
著者
久野 靖 江木 啓訓 赤澤 紀子 竹内 純人 笹倉 理子 木本 真紀子
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.23-36, 2018-06-06

コンピュータサイエンス入門教育の中で,コンピュータの動作のしくみを学ぶ部分は,講義だけで実感を持ってもらうことは難しい.電気通信大学の1年次教育では,半期(15回)の授業のうち1回(90分)をこの内容にあてているが,筆者らは2017年度から,そこに題材としてアセンブリ言語プログラミングを導入した.アンケートによる主観評価の結果,多くの学生にコンピュータの仕組みを理解してもらうことができ,またプログラミングに興味・関心を持ってもらうことができたと分かった.また,期末試験による客観評価でも,約67%の学生がプログラミング作成問題で1問以上正解ないし部分正解を得ていた.
著者
筧 捷彦
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-3, 2015-01-23

論文誌「教育とコンピュータ」の誕生に際して,折から起きている初中等教育からのプログラミング教育も含めた情報教育推進の流れの中で当学会の果たすべき役割に対する雑感を述べて,論文誌とその対象とする研究領域の発展に期待するところを記す.
著者
筧 捷彦
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-3, 2015-01-23 (Released:2015-01-20)

論文誌「教育とコンピュータ」の誕生に際して,折から起きている初中等教育からのプログラミング教育も含めた情報教育推進の流れの中で当学会の果たすべき役割に対する雑感を述べて,論文誌とその対象とする研究領域の発展に期待するところを記す. Our government declares its initiative to promote ICT education in K-12 by introducing programming activities in primary and secondary schools. The author takes notes on what IPSJ shall and can do for the initiative, and expects that the Transaction on Computer and Education will bring a lot of contribution in this respect.