著者
山城 直也 宮尾 知幸 荒川 正幹 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.96-103, 2009 (Released:2009-08-20)
参考文献数
16
被引用文献数
5 1

大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するための手法として、二酸化炭素地中貯留技術が注目されている。しかし、その実用化のためにはコストの高さが大きな課題となっており、特に二酸化炭素を分離回収する過程におけるコストが全体の大部分を占めると試算されている。そこで本研究ではアルカノールアミン溶液を用いた化学吸収法による二酸化炭素の分離回収に着目し、より優れたアルカノールアミンの設計を目指した。アルカノールアミン溶液は低温下で二酸化炭素を吸収し、加熱により吸収した二酸化炭素を放散する性質があり、二酸化炭素の分離回収に利用することが可能である。吸収液に求められる性質として、二酸化炭素を放散させるために必要な熱量が少なく、吸収速度が速いことが挙げられる。そこで、これらの要求を満たすような吸収液の開発を目的とした。まず、反応熱、吸収速度の実験データを基に、アミンの構造情報からこれらを予測する回帰モデルをPLS (partial least squares)法、GAPLS (genetic algorithm based-PLS)法を用いて構築した。その結果、GAPLS法では反応熱に対してR2=0.999、Q2=0.990、吸収速度に対してR2=0.957、Q2=0.914となり、予測精度の高いモデルが構築された。このモデルを用いて、コンピュータ内で仮想的に発生させた新規構造の物性値を予測することで、有望な物性を持つと予想される吸収液の探索を行った。その結果、実験データよりも良好な物性を示すと考えられる候補構造が複数得られた。