著者
松原 達哉 山岡 春美
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.32-43, 1968-03-31

目的:肢体不自由児の親の養育態度と普通児の親の態度とを比較研究することおよび、親と子の「親の養育態度」についのズレを研究することを目的とした。方法:被験者は、東京都内の肢体不自由児の養護学校2校の小学1年生から中学3年生までの児童・生徒の父親102人、母親124人と普通校2校の同学年の児童・生徒の父親154人、母親162人である。なお、親子のズレの研究には、肢体不自由児の中学1〜2年生15人、普通児の中学1年生30人が対象である。肢体不自由児のうち約87%が脳性まひ児、13%がポリオ児である。両親の養育態度は、(1)消極的拒否(2)積極的拒否(3)厳格(4)期待(5)干渉(6)不安(7)溺愛(8)盲従(9)矛盾(10)不一致の10の型に各10問ずつ合計100問から成る質問紙法である「親子関係診断検査」によって調べた。これらの10の養育態度の型は、パーセンタイルで結果が評価されるようになっている。結果:本研究結果は、つぎのように総括することができる。(1)肢体不自由児の母親の養育態度は、普通児の母親に比較して、「不安」や「溺愛」的傾向がある。(2)肢体不自由児の父親の養育態度は、普通児の父親に比較して、「不安」「溺愛」「盲愛」「干渉」「矛盾」「不一致」的傾向がある。(3)肢体不自由児の母親よりも、父親の養育態度により多くの問題傾向がある。(4)100の質問項目中、肢体不自由児の母親が普通児の母親より望ましい態度を示している項目は、小学生で8項目、中学生で10項目であった。反対に、普通児の母親の方がよい態度を示している項目は、小学生で48項目、中学生で23項目であった。前述と同様中学生になると母親の態度に改善がみられる。(5)発達的にみると、肢体不自由児の年令が上昇するにつれて、問題となる態度が減少している。この傾向は父親よりも母親に顕著である。この原因としては子どもを養護学校に通学させることによって、学校の先生や親同志の感化をうけて、肢体不自由児の正しい知識や将来に対する見透しがでぎてきたためと推察される。(6)親の養育態度とそれについての子どもの見方のズレは、普通児よりも肢体不自由児の方が少ない。しかし、普通児の方が肢体不自由児よりも親の態度をより好意的にみているものが多い。