- 著者
-
松原 達哉
- 出版者
- 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.3, pp.18-28, 1959-12-30
乗法九九学習を成功させるためには,児童の心身の発達および経験内容から考察して,何才何か月ごろから開始するのが,最も適当であるかを研究すること。さらに,算数学習のレディネスに影響を与える要因についての分析的研究をすることの2つを目的とした。実験方法は,アメリカの「算数の学年配当7人委員会」の方法を改善し,4つの実験群を設けた。この各実験群に,第1基礎テスト,第2基礎テスト,予備テスト,終末テスト,把持テスト,知能検査,配慮実験,ゲス・フー・チストその他の調査を実施した。被験者は,大,中都市,農村の8小学校2年,3年生1,046名を対象に22名の教師が,同一指導案によって指導した。本実験の基準に従って整理した結果では,乗法九九学習の指導開始は,8才1か月(2年2学期)から行なっても可能であることが実証された。現在,8才7か月(3年1学期)から開始しているが,さらに,6か月早めても,わが園児童の場合は,可能であると考られる。これは,アメリカのC.Washburneらの実験に比べ,2才1か月早い。また,算数学習のレディネスの要因としては,(1)算数学習に必要な知能,(2)四反応の速さ,(3)視聴覚および視聴覚器官の障害の有無,(4)健康,栄養,疲労の条件,(5)家庭的背景,(6)情緒の安定性,(7)根気の強さ,(8)自主性,(9)数の視聴覚記憶,(10)語の視聴覚記憶,(11)算数に対する興味,(12)算数的経験などが重要なものであることが実証された。