著者
溝口 拓朗 伊藤 哲 山岸 極 平田 令子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-29, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
26

間伐方法の違いが表土侵食に与える影響を明らかにする目的で,49年生ヒノキ人工林で2015年6月に列状間伐および定性間伐を実施し,その後約9か月間の土砂移動レートを比較した。その結果,列状間伐直後には,伐採木の搬出時に形成される伐採列内の搬出跡で局所的に土砂移動レートが増大することが明らかとなった。これは,木材を搬出する際に繰り返し同一箇所を木材が通過することによって土壌の浸透能が低下し,表面流が発生したことによると考えられた。しかし,間伐後約3か月で,搬出跡の土砂移動レートは大幅に低下した。これは,間伐後の夏季の降水によって表層の不安定土砂のほとんどが流出したためと考えられた。一方,定性間伐後の土砂移動レートは間伐前と比較して有意に増加しておらず,また列状間伐の伐採列および搬出跡と比較しても低かった。これらのことから本調査地においては,定性間伐は列状間伐よりも表土撹乱の小さい間伐手法であると示唆された。したがって,急傾斜地や火山灰土壌のように特に侵食を受けやすい地質では列状間伐はできるだけ回避し,表土へのインパクトの小さな間伐種を選択することが望ましいと考えられた。
著者
溝口 拓朗 伊藤 哲 光田 靖 山岸 極 平田 令子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.63-70, 2018-12-25 (Released:2019-02-02)
参考文献数
21

人工林主伐後の土砂移動と植生発達の相互作用について,土砂移動を植生回復の抑制要因とみる考え方と,回復した植生を土砂移動の抑制要因とみる考え方の両面からとらえ,これら二つの仮説を検証することにより,スギ人工林皆伐後約1年間の土砂流出と植生回復の関係を明らかにした。100年生スギ人工林伐採後約1年間の土砂移動量,降雨量,植被率を調査した。各計測期間の平均植被率と降雨で基準化した土砂移動量(土砂移動レート)の間には,全測定期間を通して明瞭な関係は見られず,決定木分析でも土砂移動量の大小を明瞭に区分できるような植被率の閾値は検出できなかった。これに対して,各計測期間で標準化した植被率増加速度は,生育期間中は土砂移動量の絶対量が小さいときに大きい値を示す傾向が認められた。決定木分析でも,土砂移動量が22.25(g/m/day)を下回ると,標準化後の植被率増加速度が大きくなることが示された。以上のことから,皆伐直後の植被率が小さく土砂移動量が大きい段階では,土砂移動が植生発達との相互作用を支配する要因になっており,植生によって土砂移動が抑制される効果よりも,土砂移動が植生発達を抑制する効果の方が大きいことが明らかとなった。また,土砂移動および植生発達の空間的な不均一性は林道開設による不安定土砂の生成や林地の枝条残材の影響を受けることが明らかとなった。