著者
井上 友樹 村上 拓彦 光田 靖 宮島 淳二 溝上 展也 吉田 茂二郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.208-216, 2007 (Released:2008-07-15)
参考文献数
42
被引用文献数
5 2

下層植生からみた剥皮害の発生傾向を明らかにすることを目的として,熊本県球磨地域のヒノキ人工林77地点を対象に,剥皮害木本数と下層植生との関連性を検討した。まず,下層植生の繁茂状況をデジタルカメラを用いて撮影し,定量化した。また,下層植生の種組成データを基に,TWINSPANにより調査点を三つの植生タイプに分類した(スズタケタイプ,先駆種タイプ,常緑高木種タイプ)。次に,下層植生が繁茂している調査点では剥皮害木本数が低く抑えられているのか,ブートストラップ法により検討した。その結果,常緑高木種タイプの調査点においてのみ,下層植生の繁茂状況が剥皮害木本数の多寡に影響していたことが明らかとなった。これは,下層植生による物理的,視覚的な遮蔽効果によるものであると考えられた。
著者
溝口 拓朗 伊藤 哲 光田 靖 山岸 極 平田 令子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.63-70, 2018-12-25 (Released:2019-02-02)
参考文献数
21

人工林主伐後の土砂移動と植生発達の相互作用について,土砂移動を植生回復の抑制要因とみる考え方と,回復した植生を土砂移動の抑制要因とみる考え方の両面からとらえ,これら二つの仮説を検証することにより,スギ人工林皆伐後約1年間の土砂流出と植生回復の関係を明らかにした。100年生スギ人工林伐採後約1年間の土砂移動量,降雨量,植被率を調査した。各計測期間の平均植被率と降雨で基準化した土砂移動量(土砂移動レート)の間には,全測定期間を通して明瞭な関係は見られず,決定木分析でも土砂移動量の大小を明瞭に区分できるような植被率の閾値は検出できなかった。これに対して,各計測期間で標準化した植被率増加速度は,生育期間中は土砂移動量の絶対量が小さいときに大きい値を示す傾向が認められた。決定木分析でも,土砂移動量が22.25(g/m/day)を下回ると,標準化後の植被率増加速度が大きくなることが示された。以上のことから,皆伐直後の植被率が小さく土砂移動量が大きい段階では,土砂移動が植生発達との相互作用を支配する要因になっており,植生によって土砂移動が抑制される効果よりも,土砂移動が植生発達を抑制する効果の方が大きいことが明らかとなった。また,土砂移動および植生発達の空間的な不均一性は林道開設による不安定土砂の生成や林地の枝条残材の影響を受けることが明らかとなった。
著者
光田 靖 高田 佳夏 溝上 展也
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.1-11, 2000-03
被引用文献数
1

パソコン上で作動するGISソフト(アメリカmicroimages社製 TNTmips)を用いて,3種類の作成方法でデジタルオルソフォトを作成し,その精度を比較した.2枚1組のステレオペア写真から発生させた数値地形図(Digital Elevation Model: DEM)を用いてオルソフォトを作成する方法1,既存している等高線をデジタイズしたベクターデータから作成したDEMを用いて作成する方法2,市販の数値地図50mメッシュ(標高)を用いて作成する方法3について,それぞれオルソフォトを作成した.作成したオルソフォトの精度を測定した結果,方法1の精度が最も良く,ついで方法2,3の順であった.また作成に関する手順や作業量について比較すると,方法2および3に比べ方法1が格段に手順も多く作業量も大きかった.これらの労力と作成されたデジタルオルソフォトの精度を考慮すると,方法3の作成法を用いてデジタルオルソフォトを作成することが最も効率的であると考えられた.次にGCP点数を7,68,96,237,327および365点と変えて作成したオルソフォトについては,GCP点数が多いほど精度が良くなるといった正の相関関係は見いだされなかったが,GCPがオルソフォトの精度に大きな影響を及ぼしていると考えられた.また作成したオルソフォトの精度を正確に評価することが難しいことが考察された.