- 著者
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山崎 梓
清水 健
藤崎 憲治
- 出版者
- 日本生態学会
- 雑誌
- 日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
- 巻号頁・発行日
- pp.706, 2005 (Released:2005-03-17)
世界的な大害虫で極めて広食性であるオオタバコガIHelicoverpa armigeraIは、終齢幼虫において、黒から緑や黄色まで、様々な体色を発現する。しかしこの色彩多型は、ワタリバッタ類やヨトウガ類に見られる相変異とは異なり、摂食した食草の種類やその部位といった餌メニューによって、体色の発現頻度が変化することがこれまでの研究から示唆されている。葉を与えたものは緑色を、花や実を与えたものは茶色を発現する傾向が見られたが、この傾向はフルシブの兄弟を用いても認められたことから、遺伝的な要因よりも餌の影響を強く受けていると考えられた。生存率などの幼虫のパフォーマンスも餌によって大きく異なった。また、野外調査において、クレオメ上の中齢幼虫と終齢幼虫の分布(花か葉上か)とその体色を比較した結果、体色が顕在化する終齢期に、花より葉に緑色幼虫が多く存在する傾向があった。これは、室内実験においてクレオメでは葉のほうでパフォーマンスが高いことと一致しており、選択的に質の高い部分を摂食していることや、鳥などの捕食者に見つかりやすい終齢期に、目立たない部位に存在していることなどを示唆する結果となった。BR体色に関係する色素を分析した結果、茶色幼虫(人工飼料を摂食したもの)と緑色幼虫(タバコの葉を摂食したもの)では、体液に含まれるカロチノイド系色素とビリン系色素の量が異なることが示された。体液以外に存在する色素や体色による行動の違いなど、今後解明すべき点は多いが、少なくとも餌由来のカロチノイド系色素と、体内で合成したビリン系色素の作用は、オオタバコガ幼虫の体色を決定する要因の一つであると考えられた。