25 0 0 0 OA 動物界の道徳

著者
山川均 述
出版者
有楽社
巻号頁・発行日
1908
著者
山川 均
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.243-260, 2004-03-01

中世都市奈良を研究する上で最も基礎的、かつ重要な史料である『大乗院寺社雑事記』の分析から、中世都市奈良に住し、かつ物品の流通や生産の中核に位置した大乗院院主・尋尊の「土器」に関する認識を多角的に検討する。また、実際の発掘資料などをもとにした土器生産とその管理体制についても併せて検討を加える。以上の結果、中世の土器生産を管轄した「座」とは単に土器の生産に関わった組織ではなく、土器以外の多種の食器類などの調進にも関わったことが判明した。また、座の管理機構は中世都市奈良の内部に存在したが、土器の生産自体は都市の西部に位置する西京において行われていたことが明らかになった。すなわち中世土器の生産と流通に関する研究においては、生産地と消費地というシンプルな関係のみならず(それが都市を媒介とするものである限りにおいては)、その管理機構をも含み込んだ複眼的な視座を設ける必要がある。近年の学際的都市研究(考古学が参加するもの)の動向としては、もっぱら地理学的な意味における「領域」の検討が重視されているが、それは主に遺構論において有効な手段といえよう。遺物などの物的資料から考究すべき「都市」とは、堀その他の囲繞施設から判断される狭義の都市領域概念に止まらず、周辺領域を包括した広義の概念下において多元的に検討を加えられるべき性格を有するものと判断する。