- 著者
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山川 大智
泉 岳樹
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2017, 2017
<b>1</b><b> はじめに<br></b><b></b> 近年, UAV(無人航空機)の低コストかつ高解像度のデータ取得能力とSfM-MVS手法を利用し,災害現場やアクセス困難地での地表計測を行う研究(例えば,小花和ほか, 2014; 泉ほか, 2014; 飛田ほか, 2014など)が数多くなされている.一方で,既存研究では露頭のように傾斜がほぼ垂直の崖面を扱った研究はほとんど見られない.これは既存のUAVの自動航行ソフトでは崖面のステレオ画像を取得することが困難なことや基準点の設置や測量が困難であることが影響していると考えられる.<br> そこで本研究では,UAVを用いて露頭のステレオ画像を取得し,露頭の3次元モデル作成を試みた.その際,UAVの位置情報のみを使用した3次元モデル(UAVモデル)と露頭内のGCPの位置を与えた3次元モデル(GCPモデル)の2種類を作成し,精度の差についても検討した.<br> <b>2</b><b> 現地調査の概要</b><br> 対象地域は神奈川県足柄下郡箱根町仙石原,箱根外輪山中腹の長尾峠露頭とした.選択理由としては,長井・高橋(2008)に地層構造が示されており比較・検討が行いやすいことや,露頭が小規模でUAVの手動フライト時の安全確保が容易であることなどが挙げられる.露頭全体を目視できる基準点をGNSS(Trimble GeoExplorer 6000XH)で測量し,そこからTS(トータルステーション, SOKKIA SRX3)で露頭内の6点のGCPの位置を測量した.<br> 使用したUAVはDJI社のPhantom3 Professionalである.調査は2016年9月16,17日の2日間で行った.16日は撮影設定やフライト方法の検討や練習を行い,17日に撮影した2回分の各約120枚の画像を分析に用いた.フライトは手動で行い崖面との距離5mを目標で行い,概ねオーバーラップ75%以上,サイドラップ60%以上の画像を取得できた.SfM-MVS解析には,Agisoft社のPhotoScan Professional Ver.1.2.5を用いた.<br> <b>3</b><b> 結果と考察<br></b><b></b> カメラ画像の撮影位置の推定結果からUAVと崖面との距離は最大でも8m以下であり,取得した画像の解像度は最大でも0.36cmであることが分かった.17日の2回目の画像に基づく露頭の3次元モデルを図1に示す.3次元モデルを拡大し判読を試みると,直径約1cm未満の中礫以上の粒子の判別が可能であった.<br> 露頭内の6点のGCPの位置をGNSSとTSで測量した結果を真値とし,位置情報の付加の仕方が異なる2種類の3次元モデル(UAVモデルとGCPモデル)上での6点の位置の推定値と比較した結果が表1である.GCPモデルの最小二乗誤差(RMSE)が0.16mなのに対し,UAVモデルのRMSEは21.84mと非常に大きい.これはUAVモデルの位置情報はUAVに搭載されている単独測位のGPSに依存しているためz方向や急斜面により視野が狭められているy方向の精度が悪いためと考えられる.ただし,UAVモデルはいずれの方向に対しても系統的な誤差が大きいため,3次元モデル自体の形状や大きさ,方位などの精度は悪くない可能性がある.そのため,2つの3次元モデル内で,長さや方位の計測を行い,比較をおこなった.その結果,長さの精度は両モデルともRMSEが0.15mで同程度,方位に関しても両モデルの差は0.1度未満であることが分かった。このことにより,絶対的な位置精度は高くないが,3次元モデルを用いて露頭の観察や計測を行うには,地上測量を行う必要のないUAVモデルでも十分な精度を持っていることが示唆される.<br><b>謝辞<br> </b> 長尾峠でのUAVの撮影許可について,箱根町企画観光部企画課ジオパーク推進室の青山朋史氏に大変お世話になりました。記して謝意を表します。