著者
山延 健
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高分子の融液からの結晶化は、材料成形プロセスおよび成形物の構造物性と密接に関係する極めて重要な過程である。従って、結晶化過程をリアルタイムで解析し、また結晶化物を平均値としてではなく、局所的に超微細構造解析し、結晶化機構を解明することは、学問的にも工業的にも重要な課題である。NMR法は結晶化過程、特にダイナミックスについてリアルタイムに観測する有用な方法である。本研究では、パルスNMR法の高感度化を行い、更に様々な応力下で測定を可能にし、溶融結晶化機構をリアルタイムで解明するともに、結晶化過程の結晶の生成、成長、厚化等を詳細に解明し、高分子材料成形の基礎的研究手法を確立することを目的とする。上記の目的のためにまず、プローブの高感度化を行った。これはプローブのフィリングファクターを改善することで達成される。そこで、試料管径を半分の5mmとしてプローブの設計を行った。その結果、プローブの感度が約20倍向上した。このプローブの性能を確認するためにポリプロピレンの重合パウダーの構造解析を行った。ポリプロピレンの重合パウダーは結晶化度が非常に低く、これは重合直後の結晶化により、通常の結晶化とは異なる機構で結晶が生成しているものと考えられる。そこで重合パウダーの熱処理による結晶化挙動を調べることにより、元の重合パウダーの構造を推定した。その結果、重合パウダーでは結晶部のサイズが非常に小さく、周りの中間相や非晶の運動開始により容易に結晶成分の構造が壊れることが明らかになった。また、上記のプローブをMXD6ナイロン、ポリカーボネートの結晶化機構の解析に応用し、結晶化の詳細な解析をすることができた。また、応力下の測定として延伸状態での測定を超高分子量ポリエチレンについて行った。その結果、この手法により絡み合い状態の解析方法を確立することができた。