著者
山本 勝則 守村 洋 河村 奈美子
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU Journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.53-59, 2013-03-31

本論文の目的は,精神看護学におけるシミュレーション教育の動向を概観し,シミュレーション教育に関する我々の取り組みを報告し,今後の教育方法の開発計画を提示することである.国内ではシミュレーション教育あるいはOSCE(Objective Structured Clinical Examination)を用いて精神看護学教育を体系的に行っている報告はほとんど見当たらず,国外でも取り組み始めたばかりである.文部科学省と厚生労働省は,看護教育における実践能力の育成・向上を主要課題の一つとしている.この課題に取り組む方策の一つとして,OSCEなどのシミュレーションを取り入れた看護教育が活発に行われている.しかし,精神看護学教育においては,シミュレータの開発が困難であることや看護技術が状況依存的であり評価が困難なことなどにより,導入が遅れている.そのような状況の中で,米国等では模擬患者(SP)を導入したシミュレーションや,シミュレータを用いた教育などの新たな展開がみられるようになった.「リアリティの高い学習への移行」を目指して精神看護教育を行っていた我々は,OSCE,SP(Simulated/Standardized Patient)参加型シミュレーション演習と,順次シミュレーション教育を導入してきた.精神看護学におけるシミュレーション教育への学生の評価は概ねポジティブである.基本的なコミュニケーション技術が獲得されていることも確認できた.今後,特に重要なこととして,①シナリオの開発,②教育全体の洗練(効率化とさらなる工夫の導入),③対外的発信がある.また,この教育方法が学生に自信を与える影響も評価する必要がある.