著者
石田 芳子 石川 千鶴子 阿部 テル子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.151-161, 2011-06-20
参考文献数
17

本研究は,多床室における間仕切りカーテン使用に対する患者の認識と使用状況を明らかにすることを目的とした。方法は,質問紙による無記名自己記入式の調査である。一般病棟4床室に入院している成人患者278名を対象に,カーテンの使用状況,カーテンを閉める理由,カーテンの開閉を思い通りにできているか,看護者に望むことについて調査した。有効回答235名のデータを分析した結果,夜間は約90%,日中は約25%の患者がカーテンを閉めていた。カーテンの閉め方は,終日閉めている患者は時間帯で差異を認め,一方夜間はベッド位置により差異を認めた。カーテンを閉める理由は,夜間は6カテゴリー,日中は5カテゴリーに分類され,コード数が最も多かった理由は【プライバシー】保持であった。患者にとって他者からの介入を拒みつつ個人の尊厳を守ることができるのはカーテン一枚で仕切られた空間であり,患者の個人空間に配慮した看護の重要性が示唆された。
著者
菅原 阿部 裕美 森 千鶴
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.11-22, 2011-09-20
参考文献数
41

本研究は,統合失調症者の病識のレベルを高める看護介入をするために,統合失調症者の病識に影響を与える関連要因を明らかにすることを目的とした。<br> 統合失調症者を対象者として病識評価尺度(SAI-J),服薬態度,HLC,病気・服薬に対する知識,病気・服薬に対する体験,精神症状,治療内容,主治医からのインフォームド・コンセント,自己効力感について調査した。このほかに半構造化面接を実施し,分析の結果,病気の認識,服薬経験,感情,受け止めなどが抽出された。各尺度の合計点とカテゴリについて共分散構造分析を行い,病識のパスモデルを作成した。「病的体験の客観視」がSAI-J,服薬体験に影響を与えており,服薬に関する感情が生じて服薬態度尺度の合計点に影響を与えていた。<br> このことから,病的体験を客観視できるようにかかわり,服薬体験の表出を促すことが病識のレベルを高める看護であると考えられた。
著者
山田 隆子 秋元 典子
出版者
日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 = Journal of Japanese Society of Nursing Research (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.25-34, 2012-12

本研究は、アルコール性肝障害入院患者が,断酒を決意し,断酒を継続するプロセスを明らかにし,断酒の決意と断酒の継続を可能にする看護支援について検討することである。入院中のアルコール性肝障害患者6 名を対象とし、半構造化面接を行い、M-GTA の手法で分析した結果、アルコール性肝障害入院患者が断酒を決意し断酒を継続するプロセスは,【アルコールに飲み込まれていった自分を振り返る】ことや,【多量飲酒がもたらす不利益を知る】ことが強い動機づけとなって【断酒し治療を受ける決心をする】を経て断酒し,その断酒の実績から【退院後も継続的な断酒を決意する】ことで、断酒継続の決意をより強めて,入院中の断酒を継続するプロセスであることが明らかになった。看護師は、アルコールに飲み込まれていった自分を患者自身が振り返ること、および、多量飲酒がもたらす不利益を自覚できるように支援する必要であることが示唆された。
著者
高瀬 美由紀 寺岡 幸子 宮腰 由紀子 川田 綾子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.103-109, 2011-09-20
参考文献数
67

本研究の目的は,国外文献を通して,看護実践能力の概念を検証することである。文献検索はCINAHLとMEDLINEを用い,nurs*とcompeten*のキーワードを掛け合わせて実施した。対象出版年は2000年から2009年とした。その結果,60文献を抽出した。看護実践能力の概念は,Rogersの概念分析法を用いて検証した。その結果,看護実践能力とは,看護実践における専門的責任を果たすために必要な個人適性,専門的姿勢・行動,そして専門知識と技術に基づいたケア能力という一連の属性を発揮できる能力,と定義できた。しかし,看護実践能力の発揮レベルについては総意が得られておらず,認識の統一が必要である。また,看護実践能力の構造化や先行・帰結因子の探求が不十分であり,看護実践能力の概念を確立するためには,さらなる検証が必要とされている。
著者
出羽 恵子 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.101-107, 2004-09-10
参考文献数
8

病院の言葉遣いに対する指導内容と実際の看護職の言葉遣いに対する患者満足度の関連を明確にするために,東京23区・大阪市・島根県・鳥取県で一般病床数100床以上の全病院の看護管理者を対象とし,看護職の「様」呼称・敬語使用の統一状況と,それらのうち,敬語使用統一病院の入院患者(以下,統一群)と不統一病院の入院患者(以下,不統一群)に対し,看護職の実際の言葉遣いと患者満足度を調査した。<br> 「様」呼称統一の割合は入院において低く,敬語使用統一の割合は外来,入院とも高かった。「統一群」の患者は看護職からより丁寧な言葉で話されていることが有意に多かった。「統一群」の患者はより丁寧な言葉遣いを希望することが有意に多く,「統一群」・「不統一群」間で病院や看護職への患者満足度に有意差はなかった。看護職の言葉遣いがより丁寧であるほど,病院や看護職への患者満足度が有意に高かった。