著者
土居 正人 山本 南利 川内 三奈美
出版者
学校法人 加計学園 国際教育研究所
雑誌
国際教育研究所紀要 (ISSN:13437119)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.23-31, 2023-03-10 (Released:2023-10-13)
参考文献数
15

自傷者の実体はそこにあるが、心が入っていないように見える時がある。本研究の目的は自傷傾向者の実存感の有無について調べることである。また、自傷傾向者の実存感の無さは、母親からの不承認や感受性の高さを示すHighly Sensitive Person (HSP)と関連するかについても検討を行う。方法として、本調査は大学生129名(有効回答者127名、有効回答率98.4%)を対象に実施した。結果として、母親からの不承認は自傷傾向者の実存感を低めることが示された。また、母親からの不承認は子供の実存感を低めて推論の誤りを高め、一方でHSPは子供の推論の誤りを直接的に高めており、両者が相乗的に関係し合って自傷傾向を高めていることが確認された。自傷傾向者は実存感が低いことから他者との交流をすることが困難であり、それゆえに自傷傾向者には心が無いように見えるのだと結論づけた。自傷の改善には他者との交流を高めるようなアプローチが必要であると考えられた。