著者
土居 正人 三宅 俊治
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.423-431, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
12

本研究の目的は, 自傷行為傾向に及ぼす親子関係の影響を検討することである. 自傷者は親からの 「不承認」 を含めて, どのような不適切な親子関係に影響を受けているのか, そして高校生から大学生に至る親子関係の発達的推移において, 自傷傾向を顕著に示す対象者はどのような親子関係の発達的特徴を有するのか, をそれぞれ明らかにする. 方法として, 高校生426名と大学生262名を対象に, 自傷行為尺度4) と親子関係尺度8) の関係を吟味した. その結果, 両親から自傷者への 「不承認」, また, 母親からの過干渉と同時に適切なサポートが供与されないといった矛盾した関わり方がそれぞれ子どもの自傷行為を誘発していることが判明した. さらに, 自傷者は親子関係における心理的離乳の発達段階に到達していないことも明らかとなった. 以上のことから, 自傷の低減には, 親子相互の建設的関係の再構築が必要であることが示唆された.
著者
土居 正人 山本 南利 川内 三奈美
出版者
学校法人 加計学園 国際教育研究所
雑誌
国際教育研究所紀要 (ISSN:13437119)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.23-31, 2023-03-10 (Released:2023-10-13)
参考文献数
15

自傷者の実体はそこにあるが、心が入っていないように見える時がある。本研究の目的は自傷傾向者の実存感の有無について調べることである。また、自傷傾向者の実存感の無さは、母親からの不承認や感受性の高さを示すHighly Sensitive Person (HSP)と関連するかについても検討を行う。方法として、本調査は大学生129名(有効回答者127名、有効回答率98.4%)を対象に実施した。結果として、母親からの不承認は自傷傾向者の実存感を低めることが示された。また、母親からの不承認は子供の実存感を低めて推論の誤りを高め、一方でHSPは子供の推論の誤りを直接的に高めており、両者が相乗的に関係し合って自傷傾向を高めていることが確認された。自傷傾向者は実存感が低いことから他者との交流をすることが困難であり、それゆえに自傷傾向者には心が無いように見えるのだと結論づけた。自傷の改善には他者との交流を高めるようなアプローチが必要であると考えられた。
著者
土居 正人 齋藤 菜摘
出版者
一般社団法人 日本自殺予防学会
雑誌
自殺予防と危機介入 (ISSN:18836046)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.18-24, 2021-03-31 (Released:2022-04-04)
参考文献数
22

本研究の目的は、自傷誘発のリスクファクターとされる生物学的基盤を持つ感受性(HSP: Highly Sensitive Person)と親から子に対して不承認的態度をとることが自傷傾向(自傷が行われる可能性の高さ)に影響を与えること、そして、そのパス経路の間には推論の誤りが媒介していることといった自傷発生の感情情報伝達過程の一端を実証的研究により検証することであった。方法として、調査は大学生314名(有効回答者数は298名)を対象に実施し、統計的解析では媒介分析を用いた。結果として、気質的な感受性であるHSPから自傷傾向の間には推論の誤りが部分的に媒介していた。そして、母親不承認を高低(平均±0.5 SD)の2群に分けて比較を行ったところ、低群では、HSPは推論の誤りを部分的に媒介していたのに対し、高群では完全に媒介していることが確認された。したがって、HSPは母親不承認が重なると、より高水準の推論の誤りを導き、その結果、自傷傾向を高めていることが示唆された。
著者
琵琶 剛志 土居 正人 安田 淳 門田 久志
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.174-179, 2020 (Released:2019-12-24)
参考文献数
6

近年の映像情報の高解像度・ハイダイナミックレンジ化および活用領域の多様化に伴い,幅広い表現力と画面の縦横比やサイズの制限のない臨場感のある映像を提供できるディスプレイの必要性が高まっている.このような要求に対し,微細な発光ダイオード(マイクロLED)を画素に用いた高い表現能力と大画面への拡張性を両立したCrystal LEDディスプレイシステムを実用化した.この実用化に向け画素となるマイクロLED,個々の画素に微細な駆動IC(マイクロIC)を配置した新たなアクティブマトリクス駆動技術,ディスプレイユニットを継ぎ目なく配置する高精度タイリング技術を開発した.マイクロLEDによる非常に高いコントラスト比と広視野角,マイクロICによる優れた輝度再現性と色度安定性を数百インチという大画面で継ぎ目なく実現でき,従来ディスプレイでは困難な臨場感のある新たな映像表現が可能となった.
著者
土居 正人 三宅 俊治 園田 順一
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1112-1119, 2013-12-01

本研究の目的は,自傷行為が行われる傾向を測定する尺度を作成し,今後の疫学的研究に資することである.これまでの自傷行為尺度は,行動的要因の項目のみで構成されており,自傷行為者特有の心理社会的要因についての質問は含まれていなかった.さらにその項目は,自傷行為に関して直接的に表現されており,尺度の精度や倫理的側面に疑問が残る.そこで本研究では,行動的要因における損傷度の高い自傷行為の表現を避け,間接的な表現にし,さらに心理社会的要因からの項目を含めることで,自傷行為者の特性を全体的にとらえ,精度の高い尺度を作成した.大学生209人を対象に質問紙調査を試行した.探索的因子分析,および確認的因子分析の結果,「抑圧状態」「自責思考」「承認欲求」「親子葛藤」の4因子20項目が最も適合した.次に構成概念的妥当性を確認するために54人の学生を対象に調査を実施し,また,基準関連妥当性を確認するために13人の自傷行為者を対象に調査を実施した結果,いずれも妥当性があると認められた.この尺度の使用によって,被験者が回答する際の心理的な負担を軽減することができ,項目からの,バイアスを回避し,精度の高い調査を行うことが可能である.