著者
山本 喜通
雑誌
名古屋市立大学看護学部紀要 = Bulletin of Nagoya City University School of Nursing (ISSN:13464132)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-7, 2011-03

血管内皮細胞による血管運動調節では、内皮細胞から放出された液性物質がpharmacomechanical couplingによって血管平滑筋の収縮に影響する機構がまず発見されたが、内皮細胞の膜電位変化により平滑筋の膜電位が変化し、それがelectromechanical couplingにより収縮・弛緩を引き起こす機構も存在する。アゴニスト刺激によって内皮細胞内Ca2+濃度が増加するとCa2+活性化K+チャネルが素早く、Ca2+活性化非選択性陽イオンチャネルが徐々に開き、前者によりまず膜の過分極が、後者により遅発性の膜の脱分極が生じる。この内皮細胞の膜電位変化が平滑筋一内皮細胞間ギャップ結合を通って平滑筋に伝わる。平滑筋の電位依存性Ca2+チャネルは過分極によって閉じ、脱分極によって開くので、これによって平滑筋の細胞内Ca2+濃度が変化し、収縮が制御される。この膜電位による血管運動調節は薄い平滑筋層を持つ細動脈で特に有効で、その部で決定される末梢血管抵抗の調節に重要と考えられる。
著者
中村 江里 鬼頭 佳彦 福田 裕康 矢内 良昌 橋谷 光 山本 喜通 鈴木 光
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.141-148, 2004 (Released:2004-02-29)
参考文献数
50
被引用文献数
1 3 1

胃壁の筋間神経層に分布するカハールの間質細胞(ICC-MY)はミトコンドリアが豊富で,平滑筋とはギャップ結合しているので,歩調とり細胞であると考えられた.ICCで発生する歩調とり電位は早い立上がりの第1相とプラトー電位の第2相から成り,それぞれ電位依存性Ca2+透過性チャネル電流とCa2+活性型塩素チャネル電流により構成される.歩調とり電位は電気緊張的に輪走筋に伝わりslow waveを誘発させ,縦走筋に伝達しfollower potentialを形成する.輪走筋では歩調とり電位からの電気緊張電位の刺激により,細胞間間質細胞(ICC-IM)において単位電位unitary potentialが発生し,この電位の加重によりslow potentialが形成される.IP3受容体欠損マウスの胃ではslow waveが観られなかったので,自発活動発生にIP3が関与していることが推定された.slow potentialの解析から,自発活動発生にはミトコンドリアにおいてプロトンポンプ活性に伴い生じる電位勾配に起因したCa2+の出入りが関与しており,局所におけるCa2+の濃度変化がプロテインキナーゼCのようなCa2+感受性タンパク活性を介してIP3濃度を変化させ,小胞体からのCa2+遊離を律動的に起こさせると,細胞膜のCa2+感受性イオンチャネルが活性化され,電位変動を引き起こさせると考えられる.