著者
Rijken Thomas A. 山本 安夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.662-669, 2013-10-05

ハイパー核物理(バリオン多体系)と核子-核子(NN)およびハイペロン(Y)-核子間相互作用(バリオン間相互作用)の研究の進展について,核物理,素粒子物理および天体物理にわたる展望のもとで述べられる.核力の一般化であるバリオン間相互作用の模型的研究は,1934年の湯川理論を起点とし,ハイパー核の実験的・理論的研究の成果を踏まえて進展した.NN, YN, YY相互作用と原子核・ハイパー核の研究が相互に関連しあうことによって発展してきたことが述べられる.
著者
山本 安夫 櫻木 弘之
出版者
都留文科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

研究代表者(山本)と海外協力研究者Th.A.Rijkenによって中間子論的SU3不変模型Extended Soft Core model (ESC)が開発された。この模型においては、従来のeffective scalar mesonsに代わってtwo meson exchange (pair term)の寄与が直接取り入れられ、極めて良い精度でNN散乱位相差のデータを再現すると同時に、ハイパー核のデータとの全体的に整合する。本研究において、ESC模型より導かれるG行列相互用G_<XX>(r;ρ,E)を用いたfolding modelによる核-核散乱の解析が大きく進展した。特にESC模型で核物質の飽和性を保証するために取り込まれている3体斥力の効果が系統的に現れることが示された。ESC模型のSU3不変性を踏まえ、G行列folding modelはハイペロン-核間相互作用の解析に適用された。旧来のESC模型には実験が示唆する強いΣ-核間斥力が出せない問題があったが、今年度に完成したESC08においては、クォーク・クラスター模型で与えられるPauli forbidden statesの影響を現象論的に取り入れることでその問題が解決された。N-核の場合と同様の枠組で得られるΣ-核相互作用を用いてΣ-核散乱の微分断面積を計算し、得られる角度分布のパターンがΣN相互作用の特徴を反映することを示した。また準自由(π^-,K^+)反応の強度関数を計算し、ESC08より導かれる斥力的Σ-核相互作用の結果が、引力的相互作用による結果よりも実験データの現象論的解析の結果とよく整合することを示した。以上の成果はHyp-X国際会議(2009年9月、東海村)において発表された。