著者
山本 安夫 櫻木 弘之
出版者
都留文科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

研究代表者(山本)と海外協力研究者Th.A.Rijkenによって中間子論的SU3不変模型Extended Soft Core model (ESC)が開発された。この模型においては、従来のeffective scalar mesonsに代わってtwo meson exchange (pair term)の寄与が直接取り入れられ、極めて良い精度でNN散乱位相差のデータを再現すると同時に、ハイパー核のデータとの全体的に整合する。本研究において、ESC模型より導かれるG行列相互用G_<XX>(r;ρ,E)を用いたfolding modelによる核-核散乱の解析が大きく進展した。特にESC模型で核物質の飽和性を保証するために取り込まれている3体斥力の効果が系統的に現れることが示された。ESC模型のSU3不変性を踏まえ、G行列folding modelはハイペロン-核間相互作用の解析に適用された。旧来のESC模型には実験が示唆する強いΣ-核間斥力が出せない問題があったが、今年度に完成したESC08においては、クォーク・クラスター模型で与えられるPauli forbidden statesの影響を現象論的に取り入れることでその問題が解決された。N-核の場合と同様の枠組で得られるΣ-核相互作用を用いてΣ-核散乱の微分断面積を計算し、得られる角度分布のパターンがΣN相互作用の特徴を反映することを示した。また準自由(π^-,K^+)反応の強度関数を計算し、ESC08より導かれる斥力的Σ-核相互作用の結果が、引力的相互作用による結果よりも実験データの現象論的解析の結果とよく整合することを示した。以上の成果はHyp-X国際会議(2009年9月、東海村)において発表された。