著者
山本 宣明
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.109-126, 2007

<p>本研究はAbernethy and Lillis(2001)に依拠して,非財務測度を含めた業績評価システムが現在の日本の大規模病院において,どのように機能しているのかを実証的に検討している.先行研究であるAbernethy and Lillis(2001)は,オーストラリアの病院を対象として病院の戦略的スタンスと診療科の自律性,業績評価システムのシーケンシャルな関係が病院の効率性と有効性に正に関連することを実証している.本研究における結果は,資源管理業績基準がモニター機能も情報的機能も果たしていないこと,自律性の委譲との対応関係に基づく財務的責任構造が明確ではないこと,診療管理業績基準がモニター機能を発揮できていないという3点を示しており,診療科の自律性を考慮した業績評価システムの構築と運用が課題であることを浮き彫りにしている.特に財務的責任構造の整備は喫緊で必要であり,併せて測度の寄せ集めに終わらない取り組みが求められている.</p>