著者
山本 尚樹
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.261-273, 2011-09-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
6

本研究は,神経学的な要因から論じられてきた乳児の寝返り動作の獲得を,個人の運動特性や知覚との関係などを考慮に入れた近年の行動発達研究の観点から捉えなおすことを目的とした。寝返り動作を乳児が初めて獲得する環境への方向定位の自発的な転換と位置づけ,その獲得過程の縦断的な観察を2名の乳児の日常の活動を撮影した映像資料から行った。対象児は脚部を活発に動かし,視線の方向と一致しない乱雑な体幹の回旋運動が増加する時期をともに経ていたが,一方の乳児はその脚部の動作に頸の伸展動作が伴うようになっていった。他方の乳児には脚部の動作の発達的変化は認められなかったが,上体に始まり視線の方向と一致した体幹の回旋運動を多く行っており,この回旋運動を徐々に大きなものへと変化させていた。こうした動作の発達的変化を経つつも,寝返り動作の獲得時期に対象児は視線と方向を一致させつつ体幹を大きく回旋させるようになっていたことが確認された。また寝返りを行う際の動作の構成は各対象児で異なり,獲得時期の体幹の回旋運動に頻繁に観察された動作パターンから対象児は寝返りを行っていることが確認された。以上の結果から,乳児の寝返り動作の獲得過程は環境への方向定位と自己の身体動作の関わり方のダイナミックな探索過程であることが示唆された。
著者
山本 尚樹
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.183-198, 2014 (Released:2016-06-20)
参考文献数
59
被引用文献数
1

本論文では,自己組織化現象に関する近年のシステム論の研究動向の観点から語られることの多かったEsther Thelenの発達理論を,George E. Coghillの発生研究を嚆矢とし,Arnold L. Gesell,Myrtle B. McGrawによって展開された古典的運動発達研究の延長戦上に位置づけ,再検討した。特に,Gesell,McGraw,Thelen,三者の発達研究・理論を比較検討し,類似点と相違点を明確にすることで,運動発達研究の基礎と今後の課題を明確にすることを目的とした。この検討により運動発達研究は,i.下位システムの相互作用から系全体の振る舞いの発達的変化を捉える,ii.発達的変化を引き起こす要因を時間軸上で変化する系の状態との関係から考察し特定する,という基本的視座をもつこと,さらにiii.系の固有の状態が発達に関与するという固有のダイナミクスの概念,iv.様々なスケールが入れ子化された時間の流れから発達を捉えるという多重時間スケールの概念,がThelenによって新たに加えられたことが確認された。最後に,このiii.,iv.の点について近年の研究動向を概観し,今後の課題を整理した。
著者
山本 尚樹
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.183-198, 2014

本論文では,自己組織化現象に関する近年のシステム論の研究動向の観点から語られることの多かったEsther Thelenの発達理論を,George E. Coghillの発生研究を嚆矢とし,Arnold L. Gesell,Myrtle B. McGrawによって展開された古典的運動発達研究の延長戦上に位置づけ,再検討した。特に,Gesell,McGraw,Thelen,三者の発達研究・理論を比較検討し,類似点と相違点を明確にすることで,運動発達研究の基礎と今後の課題を明確にすることを目的とした。この検討により運動発達研究は,i.下位システムの相互作用から系全体の振る舞いの発達的変化を捉える,ii.発達的変化を引き起こす要因を時間軸上で変化する系の状態との関係から考察し特定する,という基本的視座をもつこと,さらにiii.系の固有の状態が発達に関与するという固有のダイナミクスの概念,iv.様々なスケールが入れ子化された時間の流れから発達を捉えるという多重時間スケールの概念,がThelenによって新たに加えられたことが確認された。最後に,このiii.,iv.の点について近年の研究動向を概観し,今後の課題を整理した。