著者
永井 靹江 今村 ひとえ 山本 正代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.315-322, 1986-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
23

3週齢のウィスター系雄ラットを用いて, 基本飼料群, 塩類混合から亜鉛を除去した対照群, この対照群に未処理小麦ふすまを10%添加したWB群, 0.5% EDTA-2Na溶液で脱ミネラルした小麦ふすまを10%添加したEDTA-WB群の4群に分け, 3週間飼育後の亜鉛欠乏食ラットにおける小麦ふすまの影響を成育状況, カルシウム, マグネシウム, 鉄, 亜鉛の出納について検討した.1) 亜鉛欠乏の対照群, EDTA-WB群は3日目で成長は阻害され, 実験終了時に至るまで体重は増加せず, 3日目の体重をそのまま維持する程度であった.WB群は順調に体重が増加し, 基本飼料群と同じ成長速度を示した.さらに摂食量, 飼料効率においてもWB群は基本飼料群と有意差なく優れていた.2) 各臓器中のミネラル含有量は臓器, ミネラルの種類によって変動した。総重量あたりのミネラル量は基本飼料群, WB群で高い値を示し, 対照群, EDTA-WB群で有意に低い値を示した.大腿骨中のミネラル量も同様の結果であった.3) WB群のミネラル吸収量は基本飼料群とそん色なく良好な値を示した.とくに亜鉛の糞中排泄が抑制され, 吸収率は基本飼料群よりはるかに高く, 80%以上であった.対照群, EDTA-WB群の亜鉛吸収量は負の値を示した.4) 以上の実験結果から, 未処理ふすま中の亜鉛は亜鉛欠乏飼料を十分に補いうるもので, フィチン酸, センイ成分などミネラル吸収阻害作用で懸念される負の要素を考慮してもさらに上回った有効性が観察された.EDTA処理ふすまは何ら有効性を示さなかったが, 負の作用をさらに強調するほどではなかった.