著者
山本 淳司
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

SDに係る議論は、FDと同様に具体論の展開が求められるが、一般論としてのアドミニストレーター論が中心で、現場の職員が業務の改善を実感できる道筋を提示しきれていない。これらを解決するため、(1)定型的な実務を含む現場の職員業務を階層化した上で分析し、OJT (On-the-Job Training)への組入れを念頭に置き、業務改善の具体化を検討すること、(2)業務改善案をシミュレートし強い職員組織を提案すること、を研究の目的として設定し、この目的を遂行するために以下のような段階で進めた。1) 対象となる職員業務と職員層の特定…教学関係のマネージャークラスを主対象2) 業務の適切性を判断し業務を分析…業務プロセス等を整理3) 実務分析に基づく業務内容の見直し…業務内容が明示できるかを確認4) 業務に必要な資質や能力等の検討…予め提示の場合も検討(事務分掌規程等を参考)5) 実務に基づくSD分析のOJTへの組入れ…人事制度と連動している先行事例を参照6) 強い職員組織の提案を行うべく検討…フィージビリティを考慮研究を進めるに当たっては、代表者が関与している他の研究課題における意識調査等の一部も参考に、先行研究にも意識しながら進めた。比較検討においては、業務改善を前提として業務フロー等を確認すると、組織論的にみてプレイングマネージャーがミドルアップダウンの機能を果たすか否かに関わらず、職務説明書が予め明示され、求められた業務遂行能力等を持った職員が大学のミッションやコンプライアンスを意識し、意欲を持って業務を誠実に遂行していれば、業務はスムーズに行われていることが分かった。また、業務の対象を限定してフロー等を確認すると、業務改善に資することもあるが、大括りのjob間の重複業務等の調整には至らないため、業務全体の組換えを前提として業務に適合した組織を構築する方が望ましい等の課題が見えてきた。個々の職員を見た場合の背景として、我が国の労働慣行ともいえる無限定な業務へのスタンス等を求めることは必ずしもプラス効果を発揮していないことが考えられる。強い職員組織の提案は、その裏付けとして単純な想定しかできなかったが、今後、実務に直結した面談調査も踏まえて、更なる成果を挙げ人事制度と連動したプログラムの試行に繋げて行く計画である。