著者
山本 清洋
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

学校週5日制が生み出した余暇空間に関する大人と子どもの意味づけの類似点と差異点を明かにし,両者の意味づけを統合する原理を明らかにすることを目的に調査分析を実施し,以下の結論を得た。1 余暇空間の特性1) 小学校,中学校,公民館は大人が用意した教育活動の空間となっていて多くの子どもが参加しているが,子どもの自由な遊び空間となってはいない。2) コンビニ,スパーマケットは子どもの生き抜きの空間,待ち合わせ空間としての居場所となりつつある。3) 砂浜,釣り場,森の公園等の自然は遊びの空間となり得ていない。自然を遊びに利用する知識・技術が欠落している。4) 身近にある公園や空き地は子どもの遊び空間として機能している。5) 温泉センターは家族団らんの機会を,JR市来駅は都市文化に触れる起点を与える空間である。6) ファミコン,TVは子どもを家という空間に強烈に拘束する文化であり,再考が迫られる。2 遊び空間への意味づけ1) 大人は子どもの居場所となりつつあるファミコンやコンビニを遊び空間として認めきれていない。2) 大人は河川,海,山等の自然での遊び空間を価値づけているが,子どもの半数は否定的な評価をする。ただ,現実には大人もそれらの空間を殆ど利用していない。3) 子どもは学校の休日利用を望み,学校の先生が自分達を信頼して欲しいと望んでいる。4) 遊び空間への意味づけを統合する原則として,(1)遊び空間の主体である子どもを大人が信頼する,(2)子どもの日常生活圏への学校教師の住民化,(3)自然遊びの知識・技術の継承する活動の実施,(4)TV,ファミコンの功罪の協議,(5)諸活動を子ども形成型から子ども自身型へ転化する,等があげられる。
著者
山本 清洋
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、学校週5日制が施行された前後2ヶ年間の子どもの生活構造と余暇や生活に関する意識の変容を分析し、学校週5日制の課題を明らかにすることである。子どもの生活構造の変容を分析するためには、生活時間調査を用いた。この研究で明らかになった諸点は、次のようなものである。(1).ほとんどの子どもが学校週5日制を好意的に評価し、施行1年後には、普通の休みと同じ感覚で受け入れている。(2).日常生活に対する子どもの満足感は、学校生活に関係が深いので学校のカリキュラムや学校生活を、学校週5日制と関連させて検討することが肝要である。(3).約50%の子どもが、学校と社会教育機関が準備した地域の諸行事へ参加していることが、施行後の最も大きな生活変容である。従って、今後は、この地域の諸行事を子どもの余暇活動として定着させることが課題となる。(4).子どもは、余暇で何をし、どうすればいいかという能力を有していることから、子どもを地域行事の企画か運営に参加させることが必要である。そうすることによって、子どもが自立して余暇を過す能力が育ち、同時に学校週5日制が社会に位置づくことになる。