著者
山本 裕也 中村 順一 中山 祐治 日野 紘子 角城 靖子 宗 紗千子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1159-1162, 2013 (Released:2013-12-26)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

【背景・目的】スチール症候群の診断は自覚症状と他覚所見を統合して行うとされている. 重度の虚血症状は潰瘍や壊死または不可逆的な神経麻痺などを伴うため, 高い診断能力を有する客観的評価法が求められる. 下肢のperipheral arterial diseaseにおいて, 皮膚灌流圧 (SPP) の測定が有用であると報告されており, 治療方針の決定や予後の治癒能力の判断として臨床的に用いられている. 今回, 上肢におけるバスキュラーアクセス (VA) 関連スチール症候群に対して, SPPの診断能力を検討した. 【対象と方法】当院にて内シャントを有する患者106例を対象とした. VAの診察時にスチール症状の有無を問診し, Fontainの重症度分類によりStage I∼IVの4群に分類し, 症状なし群を加えて5群に分類した. SPPは第3指または最も症状の強い指にて測定した. 5群のSPPの平均値を算出した. また, 対象症例をスチール症状の有無により分類し, 累積相対度数によりカットオフ値を算出した. 【結果】対象症例の内訳は, スチール症状なし43例 (AVF : 24例, AVG : 19例), スチール症状あり63例 (AVF : 16例, AVG : 47例) であった. 各群の平均SPP値は, 症状なし群85.8±25.0mmHg (44例), Stage I群48.4±11.7mmHg (28例), Stage II群35.8±13.5mmHg (17例), Stage III群24.7±10.0mmHg (16例), Stage IV群17.3±2.4mmHg (3例) であった. 類積相対度数によるスチール症候群発生のカットオフ値は, 57.5mmHg (感度 : 87.1%, 特異度 : 95.3%, 陽性尤度比 : 18.2) であった. 【結語】SPPはスチール症候群の診断能力が高く, 同病態の客観的検査法として有用である.
著者
山本 裕也 大川 博永 西川 博幸 森尾 誠人 大川 弘美 増田 尚毅 住友 敬子 赤木 有希 髙本 かおり 辻 純子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.243-247, 2022 (Released:2022-04-28)
参考文献数
11

【背景・目的】エコーによるシャント狭窄の評価は狭窄径による評価が一般的だが,欧米では収縮期最高血流速度(PSV)による評価が用いられている.今回,シャント狭窄に対するPSVの定量評価の有用性を検討した.【方法】自己血管内シャントを有する患者179名を対象とした.長軸断面にて狭窄径およびPSV,短軸断面にて断面積を計測した.各測定項目の脱血不良に対する診断能力をROC分析にて比較し,PSVの相関分析を行った.【結果】ROC分析において,狭窄径と断面積は脱血不良に対する診断能力は高く,両者に差はなかったが,PSVの診断能力は有意に低かった.また,PSVは断面積や狭窄径との相関は弱かった.【結語】エコーによるシャント狭窄の定量評価においてPSVの有用性は見出せなかった.