著者
飯田 順一郎 金子 知生 山本 隆昭 佐藤 嘉晃
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.43-46, 2016-03

口唇閉鎖不全状態,すなわち常時上下の口唇が離れて口呼吸をしているような状態でいると,口腔内が乾燥しやすく,歯肉炎,歯周病などの歯周疾患が進行する要因になると考えられている.一方で,歯科矯正学の分野においても,このような口唇閉鎖不全の状態は,不正咬合の原因,あるいは動的矯正治療後の歯の位置を安定させる保定に関連して,注意すべき事象の一つとなっている. 矯正歯科治療においては,セファロ分析法などを用いて顎顔面骨格形態を分析し,その顎顔面骨格形態に調和するように,治療ゴールとしての歯の位置を決めて正常咬合に導く治療をしている.しかし,歯あるいは顎骨の位置を正常咬合に導いた後,すなわち動的矯正治療が終了した後に,得られた歯の位置,あるいは得られた正常咬合が生涯にわたって維持されるかどうかということは,矯正治療の施術の意義に関わる重要な考慮すべきポイントである.動的矯正治療終了後に通常用いる保定装置は,このような観点から,歯の位置あるいは得られた正常咬合を機械的に保持するために用いるが,生涯にわたって保定装置を使い続けることは非常に稀である. 歯は口唇,頬,舌などの口腔周囲の筋・軟組織が生み出す力に絶えず晒されており,その力によって徐々にその位置を変え得ることから,そのような口腔周囲軟組織から受ける力を考慮して治療ゴールを決定することは矯正歯科治療の成果を左右する重要な要素である. 本稿ではこの様な観点から,口唇閉鎖不全の影響,またそれに対する対応に関して,これまで行われてきた研究成果を紹介する.
著者
金澤 成美 山本 隆昭 高田 賢二 藤井 元太郎 石橋 抄織 佐藤 嘉晃 原口 直子 今井 徹 中村 進治
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.92-102, 1998
被引用文献数
31

1981年4月から1996年3月までの15年間に北海道大学歯学部附属病院矯正科を来院した矯正患者を調査対象に, 経時的推移を調査し以下の結果を得た.1. 過去15年間の来院患者総数は4, 559名で, 1981年から1990年までは増加していたが, その後の患者数は減少していた.2. 性別では, 男性 : 女性が1 : 1.5と女性が多く, また年齢が高くなるに伴い女性が増加していた.3. 初診時年齢は経時的に年齢が高くなる傾向にあり, 成長期の患者が減少し, 永久歯列期の患者が増加していた.4. 来院動機では審美障害が最も多く, 次いで咀嚼障害であった.また, 顎関節症を主訴とする患者が近年は増加していた.5. 来院経路では, 自意が減少し, 院内他科や他の医療機関からの紹介が増加していた.6. 不正咬合の種類では, occlusal anomaliesが74.2%, space anomaliesが78.7%であった.前者では, 反対咬合が40.5%, 上顎前突が13.6%であったが, 経時的に反対咬合は減少していた.後者では前歯部叢生が62.8%と多く, 経時的に前歯部叢生が増加している傾向が認められた.7. 顎顔面領域の先天異常では, 口唇口蓋裂の占める割合が高かったが, 人数では経時的に減少していた.8. 外科的矯正治療患者の割合は全体の約16%を占め, 反対咬合症例が圧倒的に多かった.9. 顎関節症状を有する患者は増加する傾向にあり, 特に女性の占める割合が高かった.