著者
知北 和久 大八木 英夫 山根 志織 相山 忠男 板谷 利久 岡田 操 坂元 秀行
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.73-86, 2017-08-28 (Released:2017-09-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

今回の研究対象である北海道・倶多楽湖は,20世紀までは冬季に完全結氷し年によっては湖氷の圧縮・膨張によるお神渡りが観察された。しかし,21世紀に入り,冬季に完全結氷しない年がこれまで4回現れており,今後の温暖化の進行によって倶多楽湖は将来,永年不凍湖になる可能性がある。ここでは,倶多楽湖の貯熱量を2014年6月~2016年5月の2年間にわたり計算し,気象因子の変動に対する熱的応答を感度解析によって検討した。なお,同湖が結氷するのは例年2~3月であるが,2015年は暖冬で部分結氷,2016年は完全結氷し,貯熱量に違いが見られた。ここでは,貯熱量を湖の熱収支に基づく方法と水温の直接測定による方法の二通りで計算し,両者を比較した。その結果,両者の間に決定係数R2=0.903の高い相関があり,熱収支による方法の妥当性が裏付けられた。これを踏まえ,主要な気象因子(気温,日射,降水量,風速)の値を変えて貯熱量に対する感度解析を行った。結果として,倶多楽湖の貯熱量は気温と降水量の増加に対して顕著に増加し,現在の湖周辺での年平均気温の上昇率0.024°C/年を考慮すると,約20年後には永年不凍湖になる可能性がある。