著者
山根 正博 国分 牧衛
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.198-203, 2016
被引用文献数
1

東北地方における1993年から2008年までの16年間のダイズ収量の年次変動と地域変動の特徴,ならびにこれらの変動と気象要因との関係を県単位および市町村単位で解析した.気象要因は降水量,日平均気温,日最高気温,日最低気温および日照時間とし,生育期間(6~10月)における月平均値を解析に用いた.解析の対象地域としてダイズ作付面積が100 haを超える市町村41点を選んだ.県平均収量の年次変動を解析した結果,収量水準は日本海側が太平洋側を上回り,日本海側では南部ほど,太平洋側では北部ほど高い傾向を示した.県平均収量は青森,岩手,秋田および山形の4つの県間にはすべて相関が認められたのに対し,宮城と福島は南北に位置する隣県とのみ相関が認められた.16年間における県平均収量とその年次間変動係数との間には正の相関が認められた.41市町村における16年間の収量変動と気象要因との関係を解析した結果,いずれの気象要因も7月の数値が収量と有意な相関を示す市町村が多く認められた.さらに市町村単位に収量と気象要因との関係を重回帰分析したところ,降水量,気温および日照時間の3つの説明変数で市町村の収量変動を説明できる場合が多く認められたが,これらの気象要因の相対的な寄与度と影響を与える時期は市町村により異なった.