著者
熊崎 一雄 佐々木 義之 山根 道資
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.489-495, 1973-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
7

農林省鳥取種畜牧場で生産された黒毛和種の雄子牛128頭,雌子牛125頭の生時体重,離乳前1日増体量および180日令補正離乳時体重について,最小自乗分析法を用いて産地別系統間の比較を行なった.結果を要約すると下記のとおりである.1. 生時体重では雄雌ともに両親の系統が有意な効果を示したが,離乳前1日増体量と離乳時体重に対しては母親の系統だけが雄子牛で有意な効果を示した.これは雄子牛の生時から離乳時までの発育に対して子牛自身の遺伝的な発育潜在能力よりも,母体効果の方がより重要なことを意味している.2. 父牛の系統としては岡山系と鳥取系,母牛の系統としては鳥取系がすぐれていた.兵庫系を父牛または母牛として用いた場合には他の系統より子牛の生時体重が小さかった.3. 系統間交配群は直系交配群より生時体重がややすぐれているようであったが,離乳前1日増体量と離乳時体重では系統間交配群の方が全般的に劣っていた.4. 系統間交配群の正逆交配では,岡山系(父)×兵庫系(母)および岡山系(父)×鳥取系(母)がその逆交配の場合より離乳時までの子牛の発育が良く,岡山系は子牛の発育潜在能力は高いが,母牛としての哺育能力の低いことがうかがわれた.これに対し鳥取系は父牛として用いた場合より母牛として用いた場合の方が全般的にすぐれた成績を示し,鳥取系の母牛の哺育能力のすぐれていることが示唆された.