著者
沖 博憲 佐々木 義之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.120-124, 1996-02-25
被引用文献数
3

サラブレッド種の走行タイムを競走能力の指標として取り上げ,個体モデルのBLUP法によって育種価を推定した後,遺伝的趨勢の検討を行なった.1975年から1993年の日本中央競馬会(JRA)の競走成績から1600mの芝馬場(芝)とダート馬場(ダート)のデータを用いた.各馬の育種価は,レース,性,年齢,騎手および負担重量を母数効果として取り込んだ個体モデルのBLUP法により,MTDFREMLプログラム(1993)を用いて予測し,遺伝的趨勢は当該年に生まれた個体の予測育種価の平均値から推定した.また,父馬と母馬の内•外国産地別による4組の組み合わせ別に遺伝的趨勢を推定した.その結果,芝•ダートとも走行タイムは,負の(速くなる)遺伝的趨勢が認められ,生年に対する回帰係数はそれぞれ-0.0170秒,-0.0084秒であった.その差は高度に有意であった(P<0.001).また,父馬母馬の産地別の遺伝的趨勢は,芝において父外国産と母外国産の産駒の遺伝的趨勢が最もい傾向が認められた.このことから近年優秀な種雄馬や繁殖母馬が輸入され,日本のサラブレッド種の改良に寄与していることが示唆される.
著者
熊崎 一雄 佐々木 義之 山根 道資
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.489-495, 1973-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
7

農林省鳥取種畜牧場で生産された黒毛和種の雄子牛128頭,雌子牛125頭の生時体重,離乳前1日増体量および180日令補正離乳時体重について,最小自乗分析法を用いて産地別系統間の比較を行なった.結果を要約すると下記のとおりである.1. 生時体重では雄雌ともに両親の系統が有意な効果を示したが,離乳前1日増体量と離乳時体重に対しては母親の系統だけが雄子牛で有意な効果を示した.これは雄子牛の生時から離乳時までの発育に対して子牛自身の遺伝的な発育潜在能力よりも,母体効果の方がより重要なことを意味している.2. 父牛の系統としては岡山系と鳥取系,母牛の系統としては鳥取系がすぐれていた.兵庫系を父牛または母牛として用いた場合には他の系統より子牛の生時体重が小さかった.3. 系統間交配群は直系交配群より生時体重がややすぐれているようであったが,離乳前1日増体量と離乳時体重では系統間交配群の方が全般的に劣っていた.4. 系統間交配群の正逆交配では,岡山系(父)×兵庫系(母)および岡山系(父)×鳥取系(母)がその逆交配の場合より離乳時までの子牛の発育が良く,岡山系は子牛の発育潜在能力は高いが,母牛としての哺育能力の低いことがうかがわれた.これに対し鳥取系は父牛として用いた場合より母牛として用いた場合の方が全般的にすぐれた成績を示し,鳥取系の母牛の哺育能力のすぐれていることが示唆された.
著者
高柳 誠二 守屋 和幸 野村 哲郎 道後 泰治 佐々木 義之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.286-290, 1996-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

品種全体に対して種雄牛の供給という役割を持ち,閉鎖牛群として維持されてきた兵庫県黒毛和種の集団構造を明らかにするために血統分析を行った.材料としては,1960,1970,1980および1988年に兵庫県で生産された黒毛和種登録雌牛から得られた無作為抽出標本(各年次200頭)を用いた.その結果,種雄牛の多様性は1960~1970年の間および1980~1988年の間で大きく減少した.また,F-統計量についてみると,平均近交係数(FIT)および無作為交配下で期待される近交係数(FST)は年次とともに上昇したが,1980年以降はFIT<FSTとなった.したがって,集団分化に起因する近交係数(FIS)および集団分化指数は次第に減少した.さらに,集団の有効な大きさは1960年から1988年の間に262から8となった.以上の結果より,兵庫県の黒毛和種集団では,遺伝的均一化および集団の有効な大きさの縮小が生じ,近年,その傾向がさらに強まっていることが明らかになった.
著者
佐々木 義之 祝前 博明
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.93-99, 1980
被引用文献数
4

和牛産肉能力検定直接法の成績を用いて増体率(ADG)および飼料の利用能力に関する種雄牛の育種価を推定した.鳥取県種畜場および宮崎県総合農試肉畜支場で昭和46年から51年までの6年間に検定された雄子牛そらそれ135頭および174頭の成績を用いた.育種価を推定した種雄牛はそれぞれ14頭および23頭であった.検定成績は補正係数を用いて,あらかじめ検定期間,季節および開始時日齢につき補正を行った.育種価の推定法としてはRENDERSON (1973)のMixed Model Solution(MMS)による方法(BLUP法)を用いた.その際,相加的血縁行列を用いることにより種雄牛間の血縁を考慮したが,それをしなかった場合,さらに,単に通常の最小自乗分散分析法による最小自乗恒数を育種価推定値と見做す場合についても検討してみた。種雄牛分散に対する誤差分散の比(&sigma;&epsilon;2/&sigma;&mu;2)は全国の検定牛から推定された分散成分を用いて算出した.種雄牛相互間の平均血縁係数は鳥取および宮崎でそれぞれ14.0%および3.0%であった.ADGに関する育種価にもとづき種雄牛に序列をつけると鳥取および宮崎の上位3頭は,それぞれ昭栄1,吉光,吉徳および第18明石,前谷,初栄であった.しかしながら,相加的血縁行列を用いないBLUP法あるいは通常の最小自乗分散分析法による最小自乗恒数では,それらの序列が異なり種雄牛間に濃い血縁関係のある鳥取の場合は,とくにその違いが顕著であった.形質ごとに求めた種雄牛の序列を比較するとADGと終了時体重との間,TDN要求率とDCP要求率との間,さらにADGと飼料要求率との間には高い正の順位相関が認められたが,ADGと粗飼料摂取率との間の相関はむしろ負の傾向を示した.
著者
小谷 基 中岡 博史 成田 暁 揖斐 隆之 佐々江 洋太郎 佐々木 義之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.353-361, 2004-08-25
被引用文献数
1 3

全国的な種牛評価の可能性を遺伝的結合度および遺伝率推定値の点から検討し,その結果をふまえて全国的な種牛評価のための最適な数学モデルに関して検討した.1997∼2002年までに全国に分布する(有)安愚楽共済牧場傘下の肥育農家から出荷された黒毛和種肥育牛のフィールド記録を用いた.数学モデルとして,母数効果の取り上げ方が異なる6つのモデルを設定し,産肉性形質に関する遺伝率を推定し,育種価を予測した.肥育農家を単位とする分集団間の遺伝的結合度が確認できたことおよび遺伝率の推定値が中程度であったことから,全国規模での種牛評価が可能であると推察される.また,予測育種価の予測誤差分散(PEV),赤池の情報量規準(AIC)および自由度調整済寄与率を指標としてモデルの選択を行った結果,全ての母数効果を組み合わせ効果として取り上げたモデルもしくは性の効果のみを組み合わせ効果から外したモデルが最適なモデルであると推察される.種牛評価を全国規模に拡大することで,より効率的な育種改良を行うことができると考えられる.